不動産クラウドファンディングは近年とても人気を集めていて、事業者の数は100社を超えて募集総額も年々増えています。
その一方で、「不動産クラファンはやめとけ」といった意見も一部で聞かれるので、不動産クラウドファンディングへの投資に興味があるものの、不安になっている方もいるのではないでしょうか?
今回は、不動産クラウドファンディングが「やめとけ」と言われる7つの理由を紹介しながら、それぞれの理由について詳しく考察していきます。
この記事が向いている人
✓ 不動産クラウドファンディングをやるか迷っている人
✓ 不動産クラウドファンディングのネガティブな意見を確認したい人
✓ 不動産クラウドファンディングをやめようと思っている人
1.「不動産クラウドファンディングやめとけ」と言われる理由
不動産クラウドファンディングはなぜ「やめとけ」と言われるのでしょうか?
世間で言われている、やめるべき理由は大きく7つあります。それぞれについて考察していきましょう。
理由1 現物の不動産を見ないで投資するから
不動産クラウドファンディングは、インターネットを通じて不動産に投資できる手法です。投資家はわざわざ現物の不動産を直接見る必要はなく、見に行って確かめる手間を省いて投資することができます。
「手間なく投資ができる」というのはメリットですが、一方で「直接物件を見ることもなく、その物件に投資するなんて恐くてできない」という意見はSNSでも目にします。特に、現物不動産投資を経験している人は、実際の物件を全く見ずに購入(→投資)することに対して、不安を感じる人も多いでしょう。
この「現物の不動産を見ないで投資する」というのは、不動産クラウドファンディングにおけるメリットでありデメリットでもあるので、この点をどう解釈するかは投資家によります。
ただ、1点覚えておくべきこととしては、不動産クラウドファンディング投資物件の情報は開示されているため、現物の不動産を実際に見る代わりに、エリア・最寄り駅から、物件名まで確認することができるということです。
その情報によって、投資を判断する人も多くいるので、必ずしも「現物の不動産を見られない」からと言って、不動産クラウドファンディングを「やめとけ」と繋げてしまうのは、少し極端な意見かもしれません。
理由2 業界が未成熟で不安定だから
不動産クラウドファンディングの業界は、下の図を見ると、2018年時点で12億だった出資額は2023年時点で1,000億円を超えていて、業界が急成長をしているのがわかります。
しかしながら、日本の不動産投資信託であるJ-REITは、2023年6月時点で約16兆円。
このように、J-REITと比べて不動産クラウドファンディングの市場規模はかなり小さく、業界として未成熟という見方もできます。
さらに、令和5年9月に国土交通省は「不動産クラウドファンディングに係る実務手引書」を公開しました。
この手引書を知った人の中には「不動産クラウドファンディングの悪徳業者によって、投資家が不利益を被ってしまわないように“投資家保護”をするために手引書が作られた」と主張する人もいます。
ここで、国土交通省の手引書の内容を詳しく確認すると、手引書の1ページ目には以下のような目的が記されています。
参考:クラウドファンディングを活用した不動産特定共同事業に係る実務手引書
確かに“投資家保護”という不動産クラウドファンディングを否定的に捉えたと見なせる点もあります。
しかし、その他の点で言うと「事業リスクの抑制とトラブル回避を促す」「適切な実務対応を助ける」「クラウドファンディングの活用促進を図る」といった目的が挙げられていて、不動産クラウドファンディングを肯定的に捉え、事業者を後押しする内容とも言えるでしょう。
そもそも、国土交通省の看板を背負って手引書が出ていることを考えると、やはり不動産クラウドファンディング市場の調査が行われ、業界の将来性自体があると判断がされた上で、このような手引書が公開されたと考えられるのではないでしょうか。
今は未成熟でも今後の発展は十分に予想されるので、業界として成熟してないからと言って、それだけで「やめとけ」と決めてしまうのは早計と言えるかもしれません。
もちろん、それを理解した上でも、先が見えない未成熟な業界であることに不安を感じるのであれば、無理して投資をすべきではないでしょう。
理由3 キャンペーンや宣伝をしているのが怪しいから
不動産クラウドファンディング各社がキャンペーンや宣伝を積極的に行っていますが、そういったキャンペーンや宣伝に嫌悪感を持つ方もいます。
「本当に求められるサービスであれば、宣伝をせずとも自然に広がるのではないか」と考えて「宣伝をしないと売れないサービス=怪しい」と考える方もいるようです。
特に、過去にそういったキャンペーンや宣伝を信じて、他の投資で損をした!詐欺にあった!という経験を持つ人は少なくなく、そういった人はかなり厳しい目を持っています。そのため、“ポイントがもらえる”、“~円分プレゼント”といった表現の宣伝を見ると「絶対に裏があるからNG」と判断して、やめとけという人もいます。
前述の通り、不動産クラウドファンディング業界は成長中ではあるものの、知らない人もまだたくさんいるので、サービスを成長させるためには、より多くの認知を獲得する必要があります。
また、そもそもキャンペーンや宣伝自体は不動産クラウドファンディングに限らず、どの業界、どの商品サービスでも行うものであり、そういった宣伝をしていること自体は、おかしいことではありません。
なので、キャンペーンや宣伝を悪とせず、本質的には「その宣伝文句は本当に正しいのか」「その投資手法は自分に合うのか」「この提供する企業が信用できるか」といった点を踏まえた上で、最終的に投資するかどうかを判断するのが、望ましいと言えるでしょう。
理由4 利回りが高すぎるのは裏があるから
不動産クラウドファンディング事業者によっては、利回り10%超の広告を見ることがあると思います。
「それだけ利回りが取れるなら、不動産クラファン事業者自身が銀行から融資を受けて、自分たちでやった方が儲かるはず。それにも関わらず自分たちでやらないのは、お客を騙して儲けようとしているに違いない、不動産クラウドファンディングはやめとけ」
この主張は、正しく聞こえるかもしれませんが、短絡的に考えすぎとも言えます。
そもそも、儲かるからと言って、銀行は会社に対して無尽蔵にお金を貸すわけではありません。
銀行で借り入れできる枠というものがあり、それは会社ごとに変わります。この枠は実績を重ねて、徐々に大きくなることはありますが、基本的には銀行からこの枠以上の融資を受けることはできません。
そのため、「ある物件を買えば儲かるとわかったので買いたいけど、銀行からの融資が限度で、お金を借りることが難しい」とき、銀行ではなく個人の投資家から資金を集められる不動産クラウドファンディングという選択肢があるのです。
その物件をうまく高額で売却できれば、投資家に返す利子を高くしても(前述の通り10%に利回りを設定したとしても)、不動産クラウドファンディング事業者は手元に儲けを残すことができます。
その算段がつけば、不動産クラウドファンディングは会社にとって資金を集めるための1つの有効な手段になるのです。
確かに利回りを高くして、裏で悪いことをしようとする悪徳業者もあるかもしれませんが、「利回りが高すぎる」という理由だけで裏があるということにはなりません。
利回りが高くて怪しいから不動産クラウドファンディングは「やめとけ」とするよりも、その投資案件は本当に高利回りを出せる物件なのか、よく見極めて投資することが大切だと言えるでしょう
理由5 ハイリスク・ハイリターンだから
1つ前の理由と同じ高利回りについてですが、不動産クラウドファンディング事業者が利回りが高いことをプロモーションすることがあるので、「不動産クラウドファンディングはハイリターン」だと思ってしまい、「一般的にハイリターンの投資はハイリスク。だから、リスクを取りたくない安定型の人はやめとけ」という人がいます。
まず、不動産クラウドファンディングは「ハイリスク・ハイリターン」ではありません。
株やREIT、現物の不動産投資にあるような、日々の需要供給の大きな変化が発生せず、相場の変動が基本的にありません。
リスクを避けて安定的にリターンを得られる投資手法なので、「ローリスク・ローリターン」に分類される投資手法です(「ローリスク・ミドルリターン」と表現する人・事業者もいます)
それでは、そもそも不動産クラウドファンディングの利回りが高くなっている=ハイリターンなのは、おかしいのではないか?という話になるでしょう。
ここで理解しておきたいのは、不動産クラウドファンディングは短期運用のものが多く、その仕組み上、「短期運用だと利回りが高くなりやすい」という点です。
同じ投資額で同じ配当金だとしても、利回りが何%になるかは運用期間によって変わります。
例えば、以下のケースがあります。
・10,000円を投資して「1年後に」1,000円の配当であれば、利回り10%
・10,000円を投資して「半年後に」1,000円の配当であれば、利回り20%
このように、不動産クラウドファンディングの高い利回りには裏がある、というよりも、仕組み上、短期運用だと高利回りになりやすくなる、ということが言えます。
この高利回りの数字だけを見て「ハイリスク・ハイリターン」だと勘違いして、不動産クラウドファンディングをやらないと判断するのは、本質を見極められてないと言えるでしょう。
ただ、1点補足しておくと、不動産クラウドファンディングは全体として「ローリスク・ロー(ミドル)リターン」ですが、不動産クラウドファンディングの中でも高利回りのものは、低利回りのものと比べてリスクが高くなるので、そのリスクの度合いは各自でよく検討することが大切です。
理由6 投資したくても当選するとは限らないから
不動産クラウドファンディングで良い物件を見つけたから投資したいと思ったのに投資できなかった!という方は少なくありません。
なぜなら「応募しても抽選に外れた」「募集金額の上限に達して締め切られていた」といったことが起こりえるからです。
だから、投資ができなかったときの労力や時間が無駄になるので、不動産クラウドファンディングは「やめとけ」と言う人もいます。
確かに、人気ファンドには応募が殺到していて、投資ができるかどうかは運という面もあり、良い投資物件に必ずしも投資できるわけではありません。
それでも、コンスタントに投資をして、不動産クラウドファンディングを中心とした投資活動を行っている人がいることも事実。「運がよかった」だけではなく、ある程度の準備をして当選率を上げている人もいます。
絶対当たる方法はありませんが、不動産クラウドファンディングで当選率を高める方法はこちらの記事で解説しています。
https://trust-blog.jp/crowdfunding_chusen_tousen
当選するかわからないから不動産クラウドファンディングに投資しない。そう判断してしまう前に「どうしたら当選できるか」を考えてみてはどうでしょうか?
理由7 元本が保証されていないから
不動産クラウドファンディングに対するマイナス意見として「元本割れが起きる可能性がある」という点が最も多いようです。
元本割れとは、ファンド運用終了後の償還金と配当の合計額が、出資金を下回ることを指します。確かに、不動産クラウドファンディングでは元本を保証することは法律上できず、元本割れのリスクが付き物です。
そのリスクを無視することはできませんが、2024年12月20日時点では、過去に元本割れした不動産クラウドファンディングをリサーチしても、実際に元本割れが発生したサービスは見つかりませんでした。
当ブログがオススメする投活(トウカツ)でも、元本割れは1件も発生していません(2024年12月20日時点)。その他の事業者においても、実際に検索してみるとわかると思いますが、元本割れの事例を見つけることは難しいでしょう。
ほかの投資手法と同じく、投資である以上、元本割れのリスクに対して深く考える必要があります。しかしながら、それを理由に不動産クラウドファンディング自体をやめてしまっては、せっかくチャンスがあったとしても、見逃してしまうことになりかねません。
2.本当にやめた方がいい人とは?
ここまで読んできて、必ずしも不動産クラウドファンディングは「やめとけ」とは言いきれないと思った方もいるかもしれません。
実際、投資を勉強している人であれば「投資手法やリスクを理解し、自分に合う投資を選ぶことが大切」と何度も耳にしたことがあると思います。不動産クラウドファンディングも投資商品の1つなので、合う人もいれば合わない人もいるということです。
そこで、どんな人が本当の意味で「不動産クラウドファンディングはやめとけ」という対象になるか、ご紹介していきます。
不動産の管理・運用も自分で行いたい人
不動産という資産を肌で感じながら、管理・運用を自分で行いたい人は、不動産クラウドファンディングをやめとけというタイプです。
不動産クラウドファンディングでは、投資家は出資するだけで管理・運用は事業者に任せます。償還まで基本的に何もすることがありません。そのため、現物の不動産投資のように自分でやらないと不安だという人にとっては向いてない投資手法です。
逆に言えば、不動産クラウドファンディングは面倒な作業を任せて投資したい、手間を軽くしたい人には向いています
細かく売り買いしたい人
売買のタイミングを自分で決めたい人、状況に合わせて細かく売り買いしたい人も、不動産クラウドファンディングはやめとけというタイプです。
不動産クラウドファンディングは、出資したら終了まで待機する投資なので、資金の流動性リスクがあります。流動性リスクとは、売りたい時に売れないリスクのことです。
そのため、自分が売りたいときに売れる自由度がほしい方には向いていません。
その代わり、運用期間が決まっていて、想定利回りを安定して受け取りやすいタイプの投資です。日常生活で必要なお金ではなく余裕資金がある人、一定期間待っていられる人、相場の変化を確認していられない人向けと言えます。
ハイリスク・ハイリターンがよい人
ハイリスク・ハイリターンの金融商品として株式があります。銘柄によって、短期間で数倍に値上がりするときもありますが、半値になることもあります。
不動産クラウドファンディングは、ローリスク・ローリターンの特性をもっており、短い期間で大きなリターンを狙うようなハイリターンは期待できません。そのため、不動産クラウドファンディングは、短期的な高利益を求める方には向いていません。
不動産に関する知識や情報に興味がない人
不動産クラウドファンディングは、事業者に管理や運用を任せられますが、投資家側にとっても一定の専門知識や情報収集は投資物件を選ぶ上で必要です。
「この物件は、本当にこの利回りを期待できるか」「この事業者は、信頼ができるのか」などの判断を下すためには、不動産に関する知識や不動産市場の動向をしっかりと収集・分析しなければなりません。
どんな投資でもそうですが、情報や知識は最適な判断を下すために重要になってきます。そのため、「不動産に興味がない」「情報収集が面倒くさい」と思う方には、不動産クラウドファンディングは向いていないでしょう。
業界の先行きが不安な人
先に述べたように、不動産クラウドファンディング業界はまだこれから成長する業界であり、未成熟な状況です。
徐々に法規制が緩和されてきた経緯があり、2024年時点では、国土交通省の手引書による後押しがあり、各社が力を入れて業界は盛り上がっている過渡期と言える状況です。
しかしながら、まだ成熟していない業界の状況に不信を抱いているのであれば、投資はやめた方がいいでしょう。
3.まとめ
今回の記事では、「不動産クラウドファンディングはやめとけ」と言われる理由について考察しました。
不動産クラウドファンディングは歴史が長くない投資手法です。それにより、インターネットでは不動産クラウドファンディング投資に関する不正確な情報もあり、さらには、投資インフルエンサーと言われる人でも、中立な見方をせず「絶対にやめとけ」という極端な意見を持って発信している人もいます。
そうした情報があふれる中で不動産クラウドファンディングに不安を感じる人は、正しい情報をもとに判断していただければと思います。