今回は、閑静な住宅地で人気の東急田園都市線に位置する「世田谷区太子堂」にある築19年中古マンションのリノベーションをレポートしていきます。
1.地域情報
・太子堂 名前の由来
「太子堂」という地名は、円泉寺の境内に聖徳太子の像を祀った仏堂があり、これを「太子堂」と呼んでいたことが地名の由来のようです。
円泉寺は1595年(文禄4年)に大和国(現在の奈良県)の久米寺から布教にきていた賢恵大和尚によって建立され、南北朝時代の末期に太子堂と小堂ができたといわれています。そしてこの時に、弘法大師作の聖徳太子の像ももたらされたとされています。
1871年(明治4年)境内に郷学所が設けられ、世田谷の教育発祥の地となりました。
今昔マップon the webより作成
・地域の歴史
江戸時代に「太子堂村」と呼ばれていた三軒茶屋は、神奈川県の丹沢にある大山阿夫利神社に雨乞いに行く多くの人の通行がある場所でした。
大山堂の本道(現在の世田谷通り)と、近道と言われた新大山道(現在の玉川通り/R246)の分岐点には「信楽」「角屋」「田中屋」の三軒の茶屋が並んでいて、道中の休み処の目標として三軒茶屋と呼ばれたのが始まりと言われています。
明治時代には商店が増え、1907年(明治40年)には玉川電鉄(現在の東急田園都市線/東急世田谷線)が開通しました、当時は多摩川の砂利を輸送する目的としていたため“ジャリ電”とも呼ばれていました。開業後は旅客誘致のために遊園地やプールなど行楽地としての開発が行われ、現在の世田谷公園のあたりに軍事施設が作られてからは、軍関係者向けの商店が並び始め商店街として発展していきました。
1969年(昭和44年)に玉川線が廃止されてからは、専用軌道を走る三軒茶屋~下高井戸は世田谷線と改称して今も残っています。
その後、1932年(昭和7年)に世田谷が東京市に編入され世田谷区として成立したことと同時に三軒茶屋も正式な地名となりました。
■東急田園都市線で渋谷駅まで3分
■東急田園都市線(東京メトロ半蔵門線直通)で大手町駅まで22分
■東急田園都市線で新宿駅まで20分(乗り換え1回)
■東急田園都市線(東京メトロ半蔵門線直通)で東京駅まで25分(乗り換え1回)
・太子堂エリア開発の歴史
1923年(大正12年)の関東大震災後、三軒茶屋へは多くの人が移り住みました。復興とともに急速に都市化し街は賑わいを見せた半面、雑多な街並みが都市整備の課題になり、三軒茶屋駅周辺では1981年(昭和56年)から大規模な再開発が進められています。
当時策定された<三軒茶屋地区市街地再開発基本構想>に基づき、駅周辺を5つの街区(エリア)に分けて再開発が進められています。
2024年9月現在、開発が完了しているのは5つの街区(エリア)のうち3街区(エリア)で、第1街区(旧アムス西部)、第2街区(キャロットタワー)、第5街区(サンタワーズ)の3つです。今後は第3街区(ブンカ名店街やすずらん通りがある繫華街エリア)と第4街区(三角地帯エリア)の開発が予定されています。
防災性の確保や魅力的な都市空間の創出等を目的として進められているこの再開発計画ですが、再開発に反対する声も少なくないため、残された2つの街区の再開発には時間がかかるという見方がされています。
第4街区の「三角地帯」と呼ばれる一角は、戦後に闇市が作られ大きな賑わいを見せた街区です。闇市で栄えた三角地帯には、飲食店を始め多くの商店が軒を連ねるようになりました。1950年にはアーケード型のエコー仲見世商店街ができました。限られたスペースに多くの商店がひしめき合っていて、昭和レトロな雰囲気が今も多く残っています。このレトロな空間に惹かれた若者や、昔を懐かしむ人が訪れる人気スポットです。
・これからの世田谷区開発(東急田園都市線沿線)
世田谷区は三軒茶屋周辺のまちづくり計画として、三軒茶屋駅を中心とした隣駅の池尻大橋、駒沢大学を三軒茶屋生活圏として捉え、この範囲の影響を視野に入れながら開発の検討を行っています。
Green UNDER GROUND
開業40年以上が経過した東急田園都市線の5駅(池尻大橋駅、三軒茶屋駅、駒沢大学駅、桜新町駅、用賀駅)のリニューアルプロジェクト「Green UNDER GROUND」をテーマに掲げサスティナブルな地下鉄駅のリニューアル工事が進んでいます。
第一弾は2021年7月に工事が始まっている「駒沢大学駅」です。リニューアルのコンセプトは「UNDER THE PARK」としており、駒沢オリンピック公園の最寄り駅として公園の「GREEN」や「WELL-BEING」、ステーションカラーの緑を壁面タイルや床材などに使用していて既存材を活かして廃棄削減も考えられたリニューアルになります。(2024年完成予定)
「サステナブルな地下駅」を目指す田園都市線5駅リニューアルプロジェクト「Green UNDER GROUN… https://t.co/eRatk3eVUB pic.twitter.com/cO6rwP0RbW
— PR TIMESビジネス (@PRTIMES_BIZ) July 30, 2021
第二弾は2024年5月に着工している「桜新町駅」です。リニューアルのコンセプトは「WITH THE CHERRYBLOSSOMS」としており、桜をテーマとしたステーションカラーを中心に木目調のベンチやカウンターを新設し、空調などの駅設備をリニューアルします。(2026年夏完成予定)
「サステナブルな地下駅」を目指す田園都市線地下区間5駅リニューアルプロジェクト「Green UNDER G… https://t.co/ywjW12ILEY pic.twitter.com/X9iKFRKJrx
— PR TIMESニュース (@PRTIMES_NEWS) April 28, 2023
このリニューアルプロジェクトにより、人気のある田園都市線5つの駅周辺は活性化が期待されています。今後の東急田園都市線の再開発・まちづくりに注目です。
駒沢こもれびプロジェクト
東急田園都市線の駒沢大学駅周辺一帯で行われているまちづくり計画です。駒沢大学駅の交差点角地に面していて地上5階地下1階に飲食店や商業施設を中心とした複合ビルになります。完成すれば駒沢大学駅のランドマーク的存在となるでしょう。(2025年完成予定)
・近隣の人気施設
世田谷公園
噴水広場やスポーツ施設、プレーパークがある世田谷地域内で最も大きな公園です。
フリーマーケットなどのイベントも行われ、ミニSL乗り場は子供たちに大人気のスポットで、休日になると多くのファミリーやペットを連れた人で賑わいをみせます。
都心に近い場所にこれだけ大きく、施設も整った公園があるのはとても貴重です。
駒沢オリンピック公園
1964年に竣工し今でも駒沢オリンピック公園のシンボルとなっている、記念塔と総合体育館は旧ソニービルや東京芸術劇場の設計を手掛けた芦原義信が設計しています。
コンクリート造の塔は重いイメージがありますが、この記念塔は五重塔のような多重塔を思わせる造りになっていて、合間から見える空が塔を軽やかに見せてくれています。
STARBUCKS RESERVE®ROASTERY TOKYO
2019年(令和元年)に世界的建築家 隈研吾氏が設計を手がけた、スターバックスコーヒーの中でもハイクラスなコーヒーを提供するカフェ。
杉を使用した温かみのある外観が特徴で、内装も目黒川の桜をイメージしたモチーフを多く取り入れ日本を感じさせるデザインになっています。
目黒天空庭園・オーパス夢ひろば
2013年(平成25年)3月に開園したジャンクション屋上の公園として、2013グッドデザイン賞や国土交通大臣賞など様々な賞を受賞し、新聞やテレビ等多くのメディアで取り上げられました。
外観はローマのコロッセオの雰囲気があり、天空庭園はアニメ映画「天空の城ラピュタ」を思わせる空間が広がっています。
壁の内部に高速道路が4層にわたって螺旋を描いていて、全国初のジャンクションの形態となっています。
2.物件情報
・立地
三軒茶屋駅・池尻大橋から徒歩10分、2つの駅のほぼ中間に位置する閑静な住宅地にあり、モダンな外観とホテルのロビーの様なエントランスホールで、共用部は高級感溢れるスペースになっています。
この洗練されたショップが連なる三宿エリアは、バブルの頃から隠れ家的なお店が多く今でもたくさんの人が訪れる人気エリアです。
また、世田谷公園が斜め前という立地はウォーキングにとてもいい環境です。
・物件概要
所在地:東京都世田谷区太子堂1丁目
交通:東急田園都市線・東急世田谷線「三軒茶屋」駅徒歩10分
構造:鉄筋コンクリート造地上9階建
総戸数:134戸
専有面積:42.47㎡
築年月:2006年8月
・間取り図<Before>
・室内写真<Before>
3.プランニング(11月1日更新)
・コンセプト
新築物件がなかなか出ないこのエリアで、ファミリー層やペットと一緒に過ごしたい人を対象に、応用の利く間取りを提案します。休日は公園でのんびりすごしたい。そんなライフスタイルを望んでいる人をイメージしています。
・リノベーション担当者の声と施工ポイント
世田谷公園が近く、ペットと一緒に住みたい人には希少なエリアにあるこのマンションを、現行の間取りの1LDKから2LDKに変更することで、単身者だけでなく2人入居や、ファミリー層にも応用が利く間取りに変更します。
今回は、リノベーションを検討する人のニーズをより明らかにするため、株式会社トラストが運営する不動産クラウドファンディング“投活(トウカツ)”の会員様を対象に「リノベーションのカラーコーディネートに関するアンケート」を実施し、そのアンケート結果から見えた人気カラーもプランニングに活用していきます。
Plan 1. 1LDKから2LDKへ変えて応用が利く間取りづくり
Plan 2. 窓のない居室に明るさと空気を取り入れるデザイン
Plan 3. 収納力減をカバーし自由度の利く空間をつくる
Plan 4. アンケートでニーズを捉えたカラーコーディネート
Plan 1. 1LDKから2LDKへ変えて応用が利く間取りづくり
現行の間取りは単身者には申し分ない広さと収納でしたが、さらに付加価値を付けるべく2~3人(大人2人+子供)が過ごせるように2つの居室をつくります。
単身者には一室をウォークインクローゼットとして利用ができるように、また2~3人でお住まいの時は2つの居室を寝室に利用できるように、使い分けのできる2LDKに変更していきます。
2つの部屋はベッドと机が置けるスペースを確保するために、リビングを少し狭くしていますが、ペニンシュラ型キッチンを採用することで視覚的に抜け感を出して広く見せます。
Plan 2. 窓のない居室に明るさと空気を取り入れるデザイン
2つの居室をつくるにあたり、窓のない居室ができてしまいます。
圧迫感のある空間を回避するために、隣の居室との間の壁にはFIX窓を取り付け、LDKに面している壁には室内窓(LIXILのデコマド)を取り付けます。今回使用するデコマドは壁の一部をくりぬいて窓にする“窓台設置”というタイプです。このデコマドは窓の上部が開閉できるので光と風を通し、開放的な空間を演出してくれます。
引用元:https://www.lixil.co.jp/lineup/livingroom_bedroom/decomado/
Plan 3. 収納力減をカバーし自由度の利く空間をつくる
2つの居室にはクローゼットを設けるため、リビング側のスペースを減少させています。扉の開閉部分はデッドスペースになってしまうので、収納力があがっても有効スペースが無くなってしまっては意味がありません。使い勝手の悪い5帖よりも、使い勝手の良い3帖の方が家具の配置もしやすくなります。
この有効スペースをつくるために、窓のない居室は扉を開けた裏側にクローゼットを配置し、ベランダ側の居室の扉は引き戸にします。
この引き戸には採光が取れる様に、スリットガラス入りの扉を使用します。さらに、3連引き違い戸を使用するので、左右自由に開口できて空間の自由度が高くなります。
洗面台は大きく幅1.2mありましたが、最適な大きさの幅0.9mに変えてトールキャビネットを設置し、収納力不足を補てんします。
また、トイレには元々手洗い場がありましたが、この手洗い場を撤去し75㎝の幅に縮小し、そのぶん洗面室を広くします。
Plan 4. アンケートでニーズを捉えたカラーコーディネート
空間の印象は“色“で大きく変わるので、カラーコーディネートはリノベーションの価値を左右する重要なポイントと言えます。
そこで、選択肢が多く印象が変わりやすい「システムキッチン」「キャビネット」「浴室」について、アンケートを実施して、その結果を元に色を選ぶことにしました。
アンケート結果の詳細はこちら→https://to-katsu2000.my.canva.site/pptx
まず、システムキッチンとキャビネットは、最も人気だったこの木目調カラーを選択します。
引用元:https://www.lixil.co.jp/lineup/kitchen/shiera/parts/parts01/
【回答者のコメント】
・木目調がスッキリして目立ちながらも茶色で落ち着きがある
・濃い色によって部屋全体が引き締まっている気がする
・落ち着いて高級感があるし、汚れが目立たなそう
一方で、浴室は木目調のカラーも選択肢にありましたが、それよりも人気になったこの明るいカラーにします。
引用元:https://kantan-navi.lixil.co.jp/colorsimulation/bath/composite.htm?product=rino
【回答者のコメント】
・白で明るい雰囲気で入浴できる
・明るくて開放感がある
・清潔感がある
・間取りBefore/After(予定)
4.施工工事
・枠組工事
解体工事が終了し、枠組工事が始まっています。
2つの居室が建ち上がり、室内全体の間取りイメージが分かる様になってきました。
・壁建ち上がり(11月16日更新)
配管工事も終わり室内の全貌が見えてきました。
WICと納戸があった箇所を3帖以上の居室として利用できるように、居室の壁をLDK側へ広げました。
キッチンの天井は低く凹凸のあるLDKでしたが、天井高が上がり視覚的効果でLDKに抜け感ができます。
天井高に合わせた大きな扉、採光が取れるように大きなすりガラスの3連引き違い戸を特注し取り付けました。
5.施工完了(12月26日更新)
日当たりがよく、どこの部屋でも光と風を感じることのできる空間に仕上がりました。
開口部が大きく、目の前が中学校のグラウンドで高い建物もないので、眺望がよく大きな空を常に感じられます。
✓使い分けのできる2LDKで様々な生活スタイルに対応
✓自由な空間づくりと収納スペース
✓空間を無駄にしない洗面室と玄関収納
✓アンケート結果を元にしたカラーコーディネート
・室内写真<After>
使い分けのできる2LDKで様々な生活スタイルに対応
LDKと居室は引き違い戸で仕切られているため、開放してLDKを広く使うことや、居室を寝室として利用することも可能です。
もう一方の玄関側の居室は、単身者なら仕事部屋や収納に、ファミリーなら子ども部屋に、またペットルームとしてなど、生活に合わせて様々な用途で使えます。
キッチンはペニンシュラ型キッチンで、カップボードと同デザインのため落ち着いた印象になります。
IHクッキングヒーターとガラスパネルのため、キッチン自体もスタイリッシュにまとまっています。キッチン収納も多く調理器具や食器も全て収まり、すっきりした見た目をキープできます。
自由な空間づくりと収納スペース
2つの居室をつくることで収納スペースが減ってしまう状況の中、各居室に収納部分を設けて窮屈にならない部屋づくりが課題となりました。
LDKから見るデコマドは、とてもスタイリッシュで室内空間を引き締める効果があります。
居室からはデコマドとFIX窓の効果で光が入り、扉開閉部のデッドスペースにクローゼットを配置し、約3.13帖を最大限活かし、どのような用途でも家具配置が想像できるような空間を作りました。
LDK隣接の居室には、特注のスリットガラス入り3連引き違い戸が使われ、日差しや明るさはもちろん、広さを感じられるようになりました。光を通すやわらかな間仕切りになります。
空間を無駄にしない洗面室と玄関収納
洗面室の施工前収納部分は洗面台下、カウンター、壁収納、洗濯機上の4か所でしたが、仕切りが少なく、奥行がない等用途のある場所に収納が出来ないことがありました。
そのため横幅120cmあった洗面台は横幅90cmに変更し、空いたスペースに横幅30cmのトールキャビネットを設置しました。
解体後、洗面台横のカウンター・壁収納部分に想定プラン以上のスペースがあったことが判明しました。この部分にはスペースを最大に生かした収納棚を造作し、これまでの収納より奥行きのある収納棚を設置することができました。
少しのスペースも無駄にしたくない!という思いからこの収納棚が実現しました。
また、玄関収納も解体後に使っていなかったスペースがあることが判明し、実質シューズインクローゼットの様に奥行きのある玄関収納ができました。
アンケート結果を元にしたカラーコーディネート
木目調のダークカラーでまとめたキッチンは、室内全体が引き締まり高級感ある仕上がりになりました。
明るい色でまとめられた浴室と洗面室は、清潔感がありスッキリまとまって視覚的に広がりを感じさせます。
・担当者インタビュー
約42㎡の1LDKを2LDKに。セミダブルと机が置ける広さ+収納が絶対条件の中、1部屋生み出すことがとても大変でした。
2つの部屋は適度に過ごせるような空間作りを意識し、室内広さの微調整を繰り返したことで、思った通りの間取りが出来上がったと思います。
~日当たりの良さと天井高が相乗効果~
他の物件でも使用してきた床材や壁紙でしたが、日当たりの良さと天井高が確保されていることで室内の印象が大きく違うことを実感しました。
アンケートを参考にした、明るい印象の部屋の中にダークカラーを使うことでスッキリ存在感のあるキッチン。モノが散乱しがちな洗面室も、多くの収納を取り入れたことで生活感がなくスッキリした見栄えになりました。
どこにいても明るさを感じる空間になりました。
~資産価値が高く保たれる物件~
ターゲットとしていたファミリー層だけでなく、単身者にも、生活スタイルが違う人でも生活イメージが付きやすい空間造りができました。
眺望をはじめ、マンション全体の共用部と管理体制の良さ、立地の良さは、自宅用不動産としてだけでなく、将来賃貸に出しても資産価値の保たれる物件になり、多くの反響をいただいています。
(担当者:リノベーション事業部 小浜)
・フォトギャラリー
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
本物件は、お住まいをお探しの方へ向けての「リノベーション物件」として販売活動を行っています。
当社はリノベーション事業だけでなく、不動産投資のコンサルティング事業、1万円から出資の出来る不動産クラウドファンディング「投活」の事業も行っています。
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