個人投資家に向けた不動産会社の問題が、2018年から立て続けにクローズアップされています。
そのような会社による斡旋の事例を見ると、アパートやシェアハウスへの投資が多く、融資を受けて一棟ものを建てた個人投資家が多かったようです。
しかし、「サブリース」や「〇年一括借り上げ保証」といったうたい文句をうのみにし、アパート経営を始めても期待された収益が上げられず、中には自己破産に追い込まれた人もいました。
不動産投資家にとってリスクが大きいアパート投資。
なぜ投資初心者がアパート投資に手を出すと危険なのでしょうか。失敗事例を挙げながら、投資初心者に向いている不動産投資の手法を考えてみましょう。
目次
1 アパート経営のリスクとその事例
アパート経営はマンションよりも収益率が高く、利益追求型の投資家向きだと言われています。
一棟物で比較した場合、マンションよりも価格が安く、個人投資家の資金力でも購入できます。
しかし、不動産投資初心者にとってアパート経営は決して安全とは言えません。具体的なリスクや失敗事例を見ていきましょう。
1-1 アパートは空室率が高い
賃貸物件としてのアパートとマンションを比較したとき、全体的な傾向として空室率はアパートの方が高いです。
株式会社タスが2018年8月に発表した「賃貸住宅市場レポート」においてアパートとマンションそれぞれの空室率が載っています。
全国的に空室率が低い東京都内で比較しても、木造軽量鉄骨造のアパートの空室率は35%と高く、対してマンションの空室率は11%と、なんと3倍以上の差がついています。
ただし、この空室率の数字は、不動産管理会社が把握しているすべての部屋数に対する空室率ではありません。満室状態の物件を除き、空室がどの程度発生しているかを示しています。
レポートのデータは満室中の物件を除いていますので、実質的な空室率よりもやや高い数値で表記されていることを覚えておきましょう。
空室率について以下の記事でさらに詳しく説明していますので参考にしてみてください。
1-2 アパートは資産価値が下がりやすい
次に考えておきたいのが、アパートは資産価値が低下しやすいという点です。
一般的にアパートを売り込む際の不動産会社のセールストークは、「土地を含むアパートは、資産価値が落ちにくい」が大半を占めています。
対してマンションは、「部屋面積の割合しか土地を所有できず、資産としての部屋の価値は減る一方」です。
確かに駅前にアパートを所有していれば、それは間違いではありません。
しかし、実際にはアパートはやや駅から離れた場所に建てられることが多く、対してマンションは駅近物件が多いのです。
アパートに多く用いられる木造や軽量鉄骨造の法的耐用年数は、それぞれ22年と18年と非常に短くなっています。
アパートを売却する場合、20年も経てば建物の価値は大きく下がります。
そのため、ほとんど土地の価格になってしまうこともあるのです。
マンションはRC造で建てられます。RC造の法的耐用年数は47年です。
築20年程度ではまだまだ建物としての価値が十分に残っているため、大きく価格が下落することはありません。
建物の機能を見ても、木造物件よりもRC造物件の劣化は遅く、断熱性や防水性、防音性などに優れています。
法的耐用年数だけではなく、そもそも住宅としての居住性も高く、アパートよりもマンションの方が経年による価値の低下がゆるやかなのです。
1-3 アパートは安全性が低く、敬遠される
マンションとアパートの入居率に大きな違いが生じるのは、防犯性や耐震性などの安全性に差があるからです。
部屋の入り口がそれぞれ路面に接しているアパートでは、賊にたやすく侵入されたり、出入りを見られたりします。
アパートは防犯面の問題から特に一人暮らしの女性から敬遠されやすいのです。
その他にも設備面から、具体的にアパートとマンションの安全性の違いを比較してみましょう。
・防犯設備
マンションはエントランスにオートロックを設置していることが多いです。
オートロックがあれば不法侵入者を玄関口でシャットアウトできますし、迷惑なセールスマンの訪問なども防げます。
最近では宅配ボックスを設置しているマンションも増え、安全と利便性の両面で快適な居住性を提供しています。
アパートでも宅配ボックスの設置は可能ですが、オートロックを設置しているアパートは非常に少ないです。
まず、集合エントランスを設けているアパートをあまり見かけません。オートロックを設置する場所自体、ないのです。
モニター付きインターホンはアパートでも設置できますが、セキュリティがそれだけでは不安が残るでしょう。
・駐車場や駐輪場
まず、アパートでは駐車場や駐輪場が建物内に設置されているケースがなく、せいぜい敷地内の一部を駐車場や駐輪場として活用している程度です。
そのため、自転車を持ち逃げされたり、車にイタズラされたりすることがあります。
マンションでは駐車場は機械式になっているところが多く、マンションの住人以外が侵入できない場所に設置されています。
駐輪場も外部の人間が入れない場所に設置されている事が多いので、盗難やいたずらの心配がありません。
・耐震性
アパートは木造や軽量鉄骨、マンションはRC造で建てられているため、耐震性に大きな差があります。
アパートでは巨額を投じて耐震構造にするのが精一杯ですが、マンションの中には耐震構造だけではなく、揺れ自体を防ぐ免震構造や制震構造が用いられています。
耐震構造は建物の倒壊を防げても、揺れ自体には無力です。
室内の物が落ちたり、ガラスが割れたりする危険性は言うまでもありません。
それに比べて免震構造や制震構造のマンションは揺れ自体を防ぎますので、家具や家電が倒壊しにくく、より安全に暮らせます。
1-4 アパートは立地の悪い物件が多い
アパートは立地の悪い物件が多く、売れにくい点もリスクの一つになっています。
それに比べてマンションは駅から離れた物件もありますが、駅近くに建てられているものが多く、売れやすいのです。
アパートの場合、地主が所有する土地の上に建てているケースが多いです。
あくまで土地活用の手段としてアパートを建てるため、駅近くに物件を持っていない人が多いのです。
収益性や運用リスクを厳密に考えないまま建ててしまう人が多いため、資産価値の低い土地に建つアパートがどうしても多くなってしまうのです。
自分で建てる時や中古物件を購入する時には、本当にアパートの場所が部屋探しをする人から需要があるのか、よく考えなければいけません。
対してマンションは個人で建てるケースは稀であり、基本的には不動産会社、いわゆるデベロッパーが建てているケースが多いです。
法人が建てるため資金力もあり、美観と収益性を備えた物件が多くなっています。
建築業者の規模によって、物件の大きさに違いが見られます。個人でも駅近くにアパートを一棟建てられる人はそうは多くないでしょう。個人投資家は融資を受けても資金力に限界があるため、立地の悪い場所にアパートを建てざるを得ないのです。
1-5 アパート経営によくあるサブリース・一括借り上げを鵜呑みにし失敗する人が多い
最近起きている問題の一つに、新築アパート経営とサブリースをセット販売する不動産会社の多さが挙げられます。
アパートは資産価値の下落が激しく、金融機関も積極的に融資しません。
融資したとしても、金融機関がリスク回避のために金利を高く設定します。
個人の資金力では一棟アパートすらなかなか建てられません。
そこで不動産会社はアパートを建てさせるために家賃保証としての一括借り上げ、つまりサブリース契約を行うことで投資家を安心させようとするのです。
「高金利のローンで毎月の返済額が増えたとしても、家賃保証が付いていますので必ず利益は上がりますし、確実に返済できますよ。」などと謳い文句にしています。
しかし、実情は入居者が集まらずに家賃の値下げを迫ったり、契約破棄を一方的に通告した投資家が莫大な借金を作ってしまったりするケースが多いのです。
今年問題になったスマートデイズ社とスルガ銀行の問題、TATERUと西京銀行の不正融資問題などは、どちらも投資家に対する無理な融資と、新築アパートやシェアハウスのサブリース契約がセットになっています。
アパートは見かけ上の収益性は高いですが、入居率が下がりやすいため、サブリース契約後に家賃が値下がりする可能性が非常に高いのです。マンション経営と比べれば、ハイリスク・ハイリターンと言えるでしょう。
サブリース契約を結ぶ時は家賃値下げのタイミングや、契約解除料などについてもよくチェックしなくてはいけません。
2 不動産投資で苦労したくないのであれば、マンションがおすすめ
このように様々なリスクがあるアパート経営ですが、対してリスクをきちんとカバーできるのがマンション投資です。なぜマンション投資はアパート経営と比べると、不動産投資の初心者でも始めやすいのでしょうか。
2-1 マンションは資産価値が落ちにくい
アパートと比べてマンションは資産価値が低下しにくいです。もちろん駅前など立地の良い場所や人気のあるエリアを選ぶ必要はありますが、建物の価値は法的耐用年数がアパートを大きく上回るため、一気に減ることがありません。家賃も下がりにくいです。
初心者が駅近くのマンションを一棟ごと買うのは困難でしょうが、区分マンションであれば都内でも1000万円程度から購入可能です。
資産価値が減らない物件を吟味しながら購入できるのです。
2-2 マンションは客付けが容易で管理に一任できる
マンションはアパートよりも入居率が高い、これは先にお伝えした通りです。
アパートと比べるとマンションは設備などがパッケージ化されており、当たり外れがありません。
どんな人がどんな物件を選んでも、一定の満足感が得られるのです。
入居者の募集に関しても管理会社に一任でき、客付けに苦労することはありません。
「サラリーマンの仕事が忙しいのに、不動産投資ができるのか」と、不安に思っている方もマンション投資であれば、ほぼ手間をかけずに客付けや管理を任せられます。
2-3 マンションは売りやすい
マンションは売りやすいという大きな特徴があります。
区分マンションであれば価格は1,000~2,000万円程度のものが多いため、一棟物よりもはるかに価格が安いです。
購入できる人が多く、売れやすいのです。
マンションには管理組合があり、管理会社がマンション全体を管理しているため、修繕が定期的に行われて建物の美観や機能面が保たれています。
アパートは大家が管理業者を入れずに自己管理することもあり、管理状態が非常に悪い場合があるのです。
価格や機能面の両方でマンションは売りやすく、買いやすいのです。
2-4 マンションは融資を良い条件で受けられる
マンションの資産価値の減りにくさや入居率の高さは、金融機関からの融資の受けやすさに繋がります。
融資の際、金融機関は主に『収益還元法』と『積算法』という二つの計算方法で、担保となる物件の価値を見定めます。
収益還元法は、物件を運営して得られる家賃の額を算出する計算手法です。
マンションは入居率を高く維持できるため、収入が一気に下がることがありません。
収益還元法で計算しても収入が計算しやすいのです。
積算法は、物件を再度購入する時にかかる費用から資産価値を計算します。
駅近くに建てられている物件が多いため、地価が上昇するケースは多いです。
建物も耐用年数が長く、一気に資産価値は下がりません。積算法をベースにした担保評価も高く、融資が楽に受けられるのです。
それだけではなく、融資の返済年数や金利などの条件面でも、マンションはアパートよりも良い条件で受けられることが多いです。そのため、返済リスクが抑えられます。
以下の記事もぜひ参考にしてみてください。
まとめ
アパート経営は見かけの収益性は高くても入居率の維持が困難であり、特に人口が減っているエリアが多い現在の日本では、安定したアパート経営が可能な場所は非常に少ないと言えます。
物件を選べば満室経営ができないわけではありませんが、大いに手間がかかります。
専業大家ならばともかく、サラリーマン副業大家の方にとってアパート経営は苦労のし通しです。
労力に見合ったものが得られる保証すらないのです。
対してマンションは、表面利回りは低いものが多いですが、空室率や労力の少なさ、返済リスクの低さがメリットとして挙げられます。
最終的にどちらの物件でキャッシュフローが多く得られるかと言えば、マンションに軍配が上がることが多いのです。
特に不動産経営を副業として行いたい、老後の年金収入以外に不労所得をつくりたいという方にとって、管理会社にすべてを委託できるマンション投資こそが最適だと言えます。
利回りが高いからと言って中古アパート経営に手を出すのではなく、まずはマンション経営を行いながら不動産投資のノウハウを身につけていくのが良いでしょう。
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