今回は、東京スカイツリーのお膝元である墨田区本所にある築35年中古マンションのリノベーション再生事業をレポートしていきます。
目次
1.地域情報
・本所 名前の由来
「本所」は江戸時代に江戸城下の一部として発展した地域であり、名前の由来には複数の説があります。
一つの説では、この地域が水戸藩の領域であった「本所」と呼ばれていたことから来ていると言われています。また別の説では、かつてこの地域にあった芝居小屋が「本所」という名前だったことが由来とされています。
明治以前までは一般に「ほんじょう」と呼び習わされ、現在の「本所(ほんじょ)」と定められたのは明治初期のことで、一般に浸透したのは昭和になってからと言われています。
明治時代、この地区を中心に本所区が誕生し、1947年(昭和22年)には向島区と合併して、現在の墨田区が形成されました。
今昔マップon the webより作成
・地域の歴史
墨田区本所は、江戸時代は農村地帯でしたが、後に城下町として栄え、商業や芸能、武家屋敷などが立ち並ぶようになりました。
江戸時代、本所地区には多くの歌舞伎小屋や芝居小屋が建ち並び、歌舞伎や浄瑠璃などの興行が行われ、賑わいをみせました。また、墨田川沿いには多くの寺院が建ち並び、現在も残る浅草寺や深川不動尊、吾妻橋などの観光地や文化施設も近くにあり、本所は江戸の中心的な地域の一つでした。
今でも人気な墨堤の桜、隅田川の花火、両国の相撲はこの時期に誕生したものと言われています。
明治時代以降、本所地区は急速な近代化が進み工業地帯として発展しました。隅田川の特性を活かした、河川の水運などを利用し輸出向け産業もこの時代に発展しました。
特に製糸業や製紙業などが盛んで、戦後は住宅や商業施設が建設され人口が増加しました。
1960年(昭和35年)に都営地下鉄1号線(現在の浅草線)が開通し、「本所吾妻橋駅」は開通と同時に開業された歴史ある駅です。
隣接する押上(スカイツリー前)駅を介して都営地下鉄浅草線と京成線の相互直通運転を行っており、成田空港までアクセスが可能です。また、都営地下鉄浅草線から京急線への相互直通運転で羽田空港までもアクセスが可能です。
■都営地下鉄浅草線で浅草駅まで約1分
■都営地下鉄浅草線で日本橋駅まで約10分
■都営地下鉄浅草線で東銀座まで約14分
■都営地下鉄浅草線で新橋駅まで約16分
□成田空港駅まで約60分
□羽田空港第1・第2ターミナルまで約45分
・現在の墨田区
2012年(平成24年)5月に東京スカイツリータウンが開業してから、地域全体が活気づき高い注目を集めています。江戸・東京のものづくり文化を支えてきた職人がいるこの下町で、文化を受け継ぎ新しい時代のまちづくりを~やさしい未来が、ここからはじまる~をコンセプトに世界に発信するまちづくりが始まり、常に進化を続けています。
訪日外国人の観光として外せない浅草と東京スカイツリーの間にある墨田川に架かる約1.5キロの隅田川橋梁に「すみだリバーウォーク」と「東京ミズマチ」が2020年(令和2年)にオープンし、新たな観光スポットとして注目されています。このエリアを存分に楽しむには一日では足りない観光スポット満載の場所です。
観光として人気の屋形船は、夜景ツアーになると橋の色や形の違いを楽しめ、東京スカイツリーのライトティングも日によって変わるので何回も乗船する人もいるようです。
・これからの「ものづくりのまち」墨田区
墨田区は東京スカイツリーの誘致を機に「ものづくりのまち」として国内外への発信を目的に「すみだ地域ブランド戦略」を開始し、地域ブランディングとして「すみだモダン」が2010年(平成22年)に誕生しました。
古くから職人のまちとして栄えていた墨田区ですが、しっかりと作られた本物の魅力を発信するプロモーション的役割として「すみだモダン」が認証し、認証した商品を通して歴史や文化、伝統を知ってもらう支援を担っています。
しかし、2018年(平成30年)に認証事業を休止しブランド戦略の転換期をむかえました。
SDGsの取り組みが広まり、環境への取り組み・モノづくりへの想い等、消費者がストーリー性を重視する様になり発信方法も変わってきました。
これまではモノへの視点だったのを、モノづくりに込められた想いに視点を当てて発信していくことに注力していく事になりました。
歴史ある「ものづくりのまち」として、モノづくりに込められた想いに視点を当てることは渡りに船だったのかもしれません。
墨田区にはコロナ以前から海外や地方からの視察が多くありました。
中小企業の多いまち、ものづくりのまちとして地域住民と一体となって、お互いに支えあいながら進化し続けるまちの先駆者として高い評価を得ています。
そして今後「すみだモダン」は海外進出も視野に入れ、伝統や文化を広く発信し伝えていく事にも注力していて期待が高まります。
・墨田区ゆかりの著名人
葛飾北斎(1760年~1849年)
作品の多くに墨田区の風景が描かれております。また、葛飾北斎の功績を称え2016年(平成28年)に「すみだ北斎美術館」が開館しました。多くの作品が展示されていて世界を代表する絵師の全てを知ることができる美術館となっています。
芥川龍之介(1892年~1927年)
1892年に東京都中央区に出生し、幼少期を墨田区にある母の実家で過ごします。代表作として、『羅生門』、『鼻』、『地獄変』、『歯車』が有名で、大正時代を代表する小説家の一人として知られています。
2.物件情報
・立地
都営浅草線本所吾妻橋駅から徒歩9分、バブル期に建てられた単身者用マンションですが、1998年(平成10年)・2004年(平成16年)・2018年(平成30年)と既に3回もの大規模修繕を行い、宅配ボックスも設置され管理の行き届いたマンションです。
とうきょうスカイツリー駅・押上(スカイツリー前)駅・両国駅・錦糸町駅・蔵前駅の中心に位置し、どこの駅へも約10~15分の徒歩圏内のため観光スポットを楽しめるエリアです。足を延ばして浅草駅までも約25分で歩けます。
・エリアからの眺望
錦糸町から東京スカイツリーへ南北に延びる大横川親水公園は、約1.8kmの緑道になっていて、噴水や釣り堀、水遊びができファミリー層に人気のスポットです。また、桜や紅葉、紫陽花など自然を感じることもでき、下町の癒しスポットとして人が集まる公園でもあります。
そして、この緑道からは東京スカイツリーが見えるので、スカイツリーを見ながらのんびり散歩をするにも最適な和みスポットです。
・物件概要
所在地:東京都墨田区本所4丁目
交通:都営浅草線「本所吾妻橋」駅徒歩9分
構造:鉄筋コンクリート造地上7階建て
総戸数:37戸
専有面積:21.17㎡
築年月:1988年9月
3.プランニング
・コンセプト
~東京の名所と共に過ごす、居住空間の価値を高める住まい~
今回の物件は21.17㎡のコンパクトマンションになります。
自宅用不動産としてではなく投資用不動産としてリノベーション工事を行うため、満足度を上げるだけでなく投資効果を確保できる物件価格に設定する必要があります。
自宅用のリノベーションとは違う、投資用不動産の視点でみるリノベーション工事になりますので違いを比較してみて下さい。
・リノベーション担当者の声と室内写真<Before>
投資用不動産となるこの物件は、エリアの適正賃料を見極め賃貸需要に適したリノベーション工事を行うことが優先課題です。
コストをかけて設備仕様のグレードを高めても、家賃が理想通りに上がるとは限りません。
新築物件に近しい設備を確保し、工事費用を抑えることで適正賃料に設定できる企画を行っていきます。
【単身者向けマンションの比較】
バブル期:広さ16㎡前後/天井高2.1m~2.2m
現 在:広さ25㎡前後/天井高2.3m~2.4m(新築マンション水準)
この物件はバブル期に建築されたマンションには珍しく、天井高が現在の新築マンションと同水準の2.4mもあるので、リノベーション前でも室内が明るく広さを感じることができます。今回の住戸は1階であることから下層階への防音対策が不要なため、床の高さを変えることなく、この天井高という最大の利点を活用した空間づくりをしていきます。
バブル期には主流の3点ユニットバスでしたが、今ではバス・トイレの独立が主流です。
このコンパクトにまとめられた3点ユニットバスを「トイレ・お風呂・洗面台」とそれぞれ独立する必要性がありますが、限られたスペースでの配置が困難を極めます。
また、現在のキッチンは調理をすることが困難な1口コンロ、キッチン下に納められた小型冷蔵庫と必要最低限の設備です。現在のライフスタイルに合っていないこのキッチンも実用性のあるキッチンスペースへ変えていきます。
バブル期に建築されたマンションは、水回り設備を最小化することで居室スペースを確保する事が一般的でした。しかし現代では自炊をし、モノを持たない暮らしをする人も増えているため、リノベーションを行う際には水回りの設備こそ重点をおくべき箇所になっています。
【今回のリノベーション工事課題】
- お風呂とトイレをそれぞれ独立した空間とする
- 浴室外に洗面台を確保して生活機能性を上げる
- 調理可能な実用性のあるキッチン・冷蔵庫置場の確保
- 水廻りを拡張しても圧迫感を感じさせない居室空間造り
- 上記を確保しながら工事コストを抑える
しかし、どんなに豪華なリノベーション工事を行っても家賃を適正賃料に設定しなければ入居者が決まらず、家賃収入が入らないという結果になり、不動産投資は成立しません。
不動産投資は地域の家賃相場を知ることも重要なポイントになります。
参照元:株式会社CHINTAI(https://www.chintai.net/)
・間取り図<Before>< After(予定)>
4.解体/施工工事(7月22日更新)
先月から解体工事が始まりました。
水回りの設備を全て入れ替えるため、床も含めて全て撤去しました。
床材に痛みがなく下地としてそのまま活用できるのでコストの削減に繋がっています。
また、床材の痛みがない事でフロアタイルも床材の上から施工でき、最近の物件と同じ天井高約2.4mを確保できます。
洗濯機置き場は従来の横長から正方形に配置し、キッチンのサイズは最近の物件と同サイズの1.2mのまま配置することで冷蔵庫置場を確保する事ができます。
床下の配管、分電盤、換気扇ダクト工事、配線の取り直しなど、見えないところも一掃することで長く安心して住める物件へと変えていきます。
また、水回りの動線を一カ所にまとめることで、入口の扉を一枚にしてコストの削減に繋げています。中の空間は腰壁を造作することで、圧迫感のないスペースに造りあげます。
室内はクローゼットの配置を変更することで生まれたスペースを活用して、3点ユニットを独立した空間に変えます。ここでの居室空間を広く見せる工夫は2つあります。
①扉の開閉デッドスペースをクローゼットに配置
②扉とクローゼットの扉高さは2.3mを採用(一般的には2.1m)
5.施工完了(8月9日更新)
1Kという限られた空間の中で賃貸需要に適した物件にバリューアップし、新築物件と遜色ない仕上がりになりました。
一人暮らしの間取りですが、水回りの動線をまとめた事で生活の効率化を向上させることができました。
✓ 水回りの動線をシンプルにし、開放的な空間を演出
✓ 開放感のある居室スペースを確保
✓ 清潔感と安全性を保つ、快適なキッチンを実現
✓ 空間を利用し、効率的な収納を使いやすく設置
・室内写真<After>
水回りの動線をシンプルにし、開放的な空間を演出
洗面室のスペースは、最近人気の欧米住宅でよくみられるトイレと洗面が一緒の間取りになります。水回りの動線がまとまりシンプルになり、造作した腰壁が空間を仕切りながら開放的な空間になりました。
また、トイレと洗面スペースを一緒にしたことで、居室への拡張を最小限にして居室スペースを広くとることが出来ました。
開放感のある居室スペースを確保
クローゼットの位置をデットスペースに移動させ、3点ユニットと冷蔵庫置場を独立させても、リノベーション前とほぼ変わらない居室スペースを確保できました。
また、天井高2.4mの室内に、2.3mの扉とクローゼットを使用したことで開放感のある室内になり広く見せることができました。天井が高いことでボリュームのある照明を設置することもでき、高級感ある室内空間を演出することも可能です。
清潔感と安全性を保つ、快適なキッチンを実現
キッチンの解体作業では想定以上の梁があり、当初のレンジフードの取付が現実的ではなくなったため仕様を変更する必要がありました。キッチン全体の入れ替えを考慮しながらも、代替のレンジフードが見つかったことで工期が遅れることはありませんでした。キッチンサイズ1.2m、2人用の冷蔵庫置場61㎝を確保し快適なキッチンに変わることができました。
また、IHクッキングヒーターにすることでキッチンでも熱がこもりません。ガス漏れもなく安全と清潔を保ちやすくなります。
空間を利用し、効率的な収納を使いやすく設置
玄関入ってすぐの洗濯機置き場は、目隠しの扉を付けると圧迫感がでてしまうことやコスト削減を考えて扉は付けず、収納スペースとして可動棚を設置しました。使い勝手に合わせて高さの調整ができ、限られた空間ではとても効率的です。白い棚で統一したことでスッキリとまとまりました。
他にも洗面室には化粧台の収納や、トイレ上にも収納棚があり収納機能が充実しています。
・担当者インタビュー
21.17㎡という小さな空間で、新築マンションと比べても劣らない空間づくりを意識し、設備を独立させ、さらに室内を広くみせる工夫を実現するプロセスはとてもいい勉強になりました。
~周りと協力しながら四苦八苦~
バス・トイレ・洗面所を独立させ、居室も充分に過ごせるスペースづくり、扉や人の通る動線を考慮しながら1mm単位で間取りを調整するのは苦労しました。
洗濯機置き場はパウダールームに入れたかった…でも、居室の間取りに影響がでる。など理想と現実のバランスがとれるように、実際に手書きで図面を書きながら試行錯誤しました。
特に大変だったことは、工事が始まってから、キッチンの梁が想定以上にあり換気扇を変更しなくてはならなかったこと、コンロのパネル発注が必要になり納品がギリギリになったこと。そういった出来事が重なったことで、工事終盤に慌ただしくなり、この物件に付きっ切りな状態になりました。
最終的には業者の方の協力のお陰で、是正工事と並行して行うことができ、どちらも期日の完成に間に合いホッとしました。
~無事に成約して一安心~
当初のコンセプトでは投資用不動産として計画していましたが、実際にはセカンドハウスや住まいとしてお探しの方からの内見があり、工事中にもかかわらずお申込をいただき成約となりました。
室内の広さと収納スペースを重視していて、1階の角部屋で想像より部屋が明るいことが決め手となったようで、試行錯誤した甲斐があった!ことを実感しました。
“1Kで使いやすい間取りがいい“ことは以前のリノベーションで経験していたので、シンプルな間取りになったこのリノベーション物件には自信がありました。ただ、実際にお客様が受け入れてくれるかは分からないので不安もありましたが、成約も早々に決まり安心しました。
これからのリノベーション物件も、早いタイミングでも評価をいただける物件づくりを目指したいと思います。
(担当者:リノベーション事業部 小浜)
・フォトギャラリー
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
本物件は、不動産投資物件として投資効率を確保できるリノベーション工事を行いました。
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