家賃収入を得る大家さんにとって大きなリスクのひとつが、家賃滞納問題です。
滞納されることにより、家賃収入がなくなることでの自身の金銭的な負担だけでなく、家賃滞納者が長期間居座ることによる時間や労力のダメージは計り知れません。
滞納をしてしまったとしてもすぐに支払ってもらえれば問題の長期化にはならないのですが、放っておいても状況はよくなることはありません。
では一体、家賃滞納者にはどのように対処すれば良いのでしょうか。
今回は、家賃を滞納された時の基本的な対応方法から滞納リスクを未然に防ぐ方法までご紹介していきます。
1.強制退去は起訴から約5か月後
実は、家賃を滞納されたとしてもすぐに強制退去させられるわけではありません。
日本の法律では大家さんよりも入居者の方が手厚く守られているのが現状です。
そのため、強制退去させるためには法的措置が必要となります。
その場合に備えて、きちんと順序立てて相手に支払いを促さなければならず、様々な手続きを踏むこと約5ヶ月…やっと強制退去を実行ができるのです。
実際、この期間は大家さんにとって精神的にも肉体的にも大きな負担となり、強制退去が可能になったとしても搬出などでまた費用がかさむことになります。
もちろん、これらの費用は滞納者に請求することができます。
しかしながら、家賃さえも払うことがままならない相手への費用回収はかなり難しいのが現実です。
2.強制退去が可能になる3つの条件
強制退去とは、賃貸借契約を結んだ後に、大家さんから強制的に契約解除をして明け渡しをさせることをいいます。
強制退去は家賃滞納者への最終手段のため、誰にでも行えるわけではなく最低でも3つの条件全てに該当していることが必要です。
2-1:滞納期間が3か月以上である
まず、条件の一つとなるのが家賃滞納期間が3ヶ月であることです。
賃貸契約書には、「2ヶ月以上の滞納があった時に契約解除となる」といった条件が記載されていることと思います。
しかし裁判では契約違反をしているからといって、1ヶ月や2か月で即刻強制退去とはなかなか認められません。
法的に決まっているわけではありませんが、最低でも3ヶ月以上の滞納をした場合、裁判で強制退去を認められる可能性が高いようです。
2-2:支払いの意思がない
そして、次に条件となるのが支払いの意思がないことです。
支払いの意思がないと認められる場合、強制退去の可能性が非常に高まります。
しかし、連帯保証人からの支払いがあった場合は支払いの意思がないとはみなされずに強制退去をさせることはできなくなります。
2-3:信頼関係が破綻している
最後に、大家さんと入居者との信頼関係が破綻していることが必要です。
これは、支払いの意思がないという部分の延長線上にあります。
貸借契約は大家さんと入居者の信頼関係を基として成り立っているものとされています。
大家の義務→部屋を貸す
入居者の義務→家賃を払う |
大家の権利→家賃をもらう
入居者の権利→部屋を借りる |
大家の義務と権利、入居者の義務と権利のそれぞれがしっかりと果されていることで賃貸借が成り立ちます。
この関係が崩れると信頼関係が壊れたとみなされ、ここで初めて大家さんが一方的に契約解除できるとみなされ、強制退去の可能性が高まるといえます。
2-4:上記を満たしていた場合でも注意すべきこと
実は、上記の3つを満たしているからといって「強制退去」が可能、とはいえません。
3つの条件を満たしていたからといって認められない場合もあります。
例えば、
・家賃の滞納が一時的である
・大家側の権利の濫用と認められた場合
(修繕を怠っているなど)
権利の濫用とは:権利の行使において、正当な範囲から逸脱して、正当な行使と認められない状態のこと
このような場合は、例え3つの条件に該当していたとしても強制退去は認められませんので注意が必要です。
3.大家が絶対にやってはいけないこと
大家が「家賃を支払って。支払えないなら出て行って。」と家賃滞納者に要求するのは当然の権利です。
しかし、大家だからと言って何をしてもいいわけではありません。場合によっては、罪を問われてしまう可能性があります。
やってはいけないことの中で特に気を付けて頂きたいのは、次のようなことです。
3-1:勝手に部屋に入る(住居侵入罪)
家賃を滞納している場合であっても、勝手に鍵を開けて入居者の部屋に許可なく立ち入ることは絶対にしてはいけません。
自分が所有している物件であったとしても、入居者に貸している間は入居者の部屋です。
たとえ自分の物件だとしても、刑法上の住居侵入罪に問われる可能性があります。
3-2:退出を要求されているのに居座る(不退去罪)
家賃を支払わないからといって、入居者が「帰ってほしい」と断ったのにも関わらず居座り続けると住居侵入罪だけでなく、不退去罪にあたります。
決して無理強いせず、日を改めましょう。
第百三十条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。 |
3-3:大声をあげる、暴力をふるう、脅す(脅迫罪・強要罪)
早く出て行かせたい気持ちで、入居者に感情的になることは避けましょう。
例えば、大声で叫んだり、むなぐらをつかんだり、拳や怖い表情で威嚇することは脅迫罪や強要罪に当たります。
そのような場合は、冷静に対処するように心がけることが大切です。
万が一、入居者がケガを負ってしまった場合は損害賠償を請求させてしまう可能性があります。
3-4:家財などの持ち物を運び出す、壊す(器物破損罪)
自分の物件だからと部屋に入ることはやってはいけないことだと上記でお伝えしました。
どうしてもでていってほしいがために、住居に侵入をしたうえに、家賃滞納者の所有物を勝手に移動させたり、壊したりすると住居侵入罪ならびに器物損壊罪に当たりますので絶対にやめましょう。
第二百六十一条 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。 |
4.強制退去の前にまず交渉をする
家賃滞納が発生した場合、まずは「家賃を回収すること」がお互いの為に最善の策です。
入居者も家賃滞納には様々な理由があります。
家賃滞納=強制退去と考える前に、初期段階で適切な対応をとり、家賃を回収することを第一に考えましょう。
そうすることで無駄な空室リスクを防ぐことにもつながります。
4-1:電話で催促する
家賃滞納が発生した場合、「振り込みがなぜ遅れているか」の確認が必要です。
理由としてよくあるのが、「振り込み忘れていた」といった理由です。
このような場合は、再発防止の注意を促し早急に振込をしてもらうことで解決できます。
電話してもでない場合は留守電にいれることで、滞納へ危機感をもたせることもでき効果的です。
4-2:家にいく
問題は、連絡が全く取れない場合です。
室内で倒れていたり、事件に巻き込まれたりする可能性もあるため、早めに物件を訪問しましょう。
電話よりもしっかりと話せる為、詳しい事情や状況も把握することができます。
また、対面で話すことにより、入居者も支払わなければいけない気持ちが強くなります。
ただし、明らかに居留守を使っている場合は、悪質な家賃滞納者の可能性が高いです。
4-3:請求書を投函する
電話も通じず、訪問しても不在の場合、請求書をポストへ投函しましょう。
そうすることで、より支払いの必要性を感じさせることができます。
ただ忘れているだけの場合もあるので、なるべく文面もきつくせずに支払ってもらえるように促す文章にしましょう。
4-4:内容証明で催促状を送付する
それでも応答がない場合、催促状を内容証明で送りましょう。
(内容証明:いつ、誰が、誰宛に、どのような内容の書類を送ったのか、日本郵便が証明する制度。)
本人が受け取ったか受け取っていないかにかかわらず、通知したことが証明できるため、万が一、裁判になった場合に「家賃滞納についてしっかり催促した」という必要証拠となります。
もし催促状の段階で振り込みがあれば、今後、家賃滞納を繰り返さないよう念書などをとっておくことも大切です。
4-5:連帯保証人に連絡する
連帯保証人は親族がなっていることが多いため、保証人から支払ってもらえることも多くあります。
滞納が続き、それでも本人と連絡がつかない場合は、連帯保証人に連絡をとりましょう。
ただし、稀に連帯保証人にも連絡がつかないこともありますので注意が必要です。
5.家賃滞納の対策
これまで家賃滞納が起こった場合の方法をお伝えしてきましたが、もちろん家賃滞納リスクを未然に減らす対策があります。
事前にできる効果のある対策には次のようなものがあります。
5-1:保証会社をつかう
「家賃保証会社」を利用する方法です。
最近では家賃保証会社に加入することを入居の条件としている物件も増えています。
保証会社に加入してもらうことで、万が一入居者が期限内に家賃を支払わなかったとしても、入居者の代わりに保証会社が家賃を支払ってくれます。
更に、利用するための保証料は入居者負担なので大家さんの負担がなく無収入になるリスクを回避できるのです。
5-2:管理会社に管理してもらう
物件の管理を管理会社に管理を任せることで、滞納発生からの一連の回収作業を任せることができます。
もちろん、家賃滞納の際だけでなくその物件に係るすべてのことを管理してくれます。
そうすることで、精神的にも体力的にも負担なく大家さんとして安心して家賃収入を得ることができます。
まとめ
強制退去は、お金と時間が非常にかかることがおわかりいただけたでしょうか。
更に手間や労力もかかるため、不動産を所有して他人に貸す場合は、絶対に防ぐべきリスクとなります。
家賃滞納が発生した場合の負担を減らすためにも、事前に保証会社に加入を促すなどの未然に防ぐための方法はあるので、うまく活用することが大切です。
更に、信頼できる管理会社を選ぶことで、管理会社が大家業を委託して行ってくれるため煩わしい作業をすべて任せることができます。
不動産投資を手間なく円滑に行う為にも、知識と対策が必要になります。
貸す前に、滞納するかどうかは誰にもわからないので、もし滞納されてしまったときのこともしっかりと考えておくことが大切です。
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