不動産投資に関わる情報を見ていると、たまに「レントロール」という言葉が出てきます。
しかし「レントロールって何?」という方も多いのではないでしょうか。
レントロールは物件を購入する前に必ず確認すべきものです。
レントロールには現在の賃貸状況や、部屋の状況、設定されている家賃などが記載されています。
不動産投資で利益を得るために必要なヒントがいっぱいつまっている大事な書類といえます。
この記事ではレントロールにどんなことが書かれているのか、そして見逃せない7つのチェックポイントを解説させていただきます。
そして中には偽ったレントロール(!?)もありますのでその見極め方も教えます!是非最後までお付き合いください。
1.レントロールで確認できる内容とは
レントロールというのは、簡単に言ってしまえば「賃貸物件の契約条件等の一覧」です。
不動産投資家にとってレントロールは、物件の運用を始めた後の収支シミュレーションや賃貸需要の確認、問題の発見などに繋がる大事な資料であるため、物件購入前に必ずチェックすべきものとして認識されています。
では、レントロールに一体どんなことが書かれているのか見てみましょう。
1-1:レントロール記載項目一覧
レントロールは正式なテンプレートがあるわけではないため、書面の形式や記載内容、見方などは物件や作成者により様々です。
しかしレントロールは不動産投資家だけでなく、管理会社が保管する情報として、または資産価値の評価で使用することもあり、最低限記載すべき内容は大体決まっています。
多くのレントロールで記載される内容は以下の表をご覧ください。
一覧にすると非常に多くの情報が記載されていると感じますが、どのレントロールも下図のような表になっていますので「どの部屋がどんな間取りか」「いくらで貸しているか」ということがひと目で分かるようになっています。
このように、賃貸条件や現在の状況が分かれば、自分がその物件を購入した後にどのくらいの収入が得られるかということをシミュレーションしやすくなりますよね。
これから物件を購入される方にとって、レントロールはなくてはならないものなのです。
1-2:レントロールはどこで確認できる?
では、レントロールはどこで確認することができるのでしょうか。
先ほどのような詳細な賃貸条件が分かるなら、購入する物件を探すときの資料として一緒に確認したいところです。
レントロールを確認するのであれば、まず不動産会社に問い合わせる必要があります。
通常は売り主が不動産会社に売却依頼をするタイミングで、レントロールを含めた物件の詳細資料をオーナーから不動産会社に渡します。
オーナーがレントロールを作成していなければ、管理会社が自主的に作成している場合もあります。
よって、まずは気になる物件に目星を付け、内見をするタイミングや不動産会社に訪れた際、気になった物件について電話で問い合わせたときに「レントロールを見たい」と告げて見せてもらうのが一般的な流れです。
なお、レントロールは個人情報などの公に公開できない内容が記載されていることがあるため、不動産情報サイトに掲載されることはありませんし、元々のオーナーさんが自主管理をされていてレントロール自体が無い場合もあります。
人それぞれの思惑から必ずレントロールを見ることができるわけではないことは覚えておきましょう。
2.レントロールで見逃せない7つの注意ポイント
さて、一棟マンションやアパート投資を始める前には必ずレントロールを確認します。
記載された内容全てが大事とも言えるのですが、特に注意してチェックすべきポイントがあります。
そこで、先ほどのレントロール例を基に、最低限チェックしておくべきポイントをまとめましたのでご覧ください。
2-1:適正な家賃は設定されている?
上図の家賃をご覧ください。
部屋によって家賃が違いますよね。
まず101号室は、他の部屋より広い1DKで陽当りの良い角部屋のため最も高い家賃。
それに対し107、108号室は同じ広さの他の部屋より2000円高くなっており、㎡単価に直すと1000円も差があります。
レントロールはこの家賃の違いに注意が必要です。
例えば107号室は106号室と比べると家賃は2000円高くなっており、契約したのは8年前ですから長期入居中ということになります。
つまり107号室が空室になって次に募集するときは、家賃を下げなければいけない可能性が高いのです。
よって、レントロールどおりの家賃をそのまま不動産投資の収支シミュレーションに当てはめると、後に大きな誤差が発生してしまいますので、周辺の家賃相場と今後の家賃下落を加味してレントロールを見ることが重要です。
2-2:利回りをチェックしよう
周辺の家賃相場などと照らし合わせて適切な家賃収入の目安が把握できたら、今度は「利回り」を確認します。
上図ですと「満室時」の収入が74万6000円ですので、年間895万2000円の収入が得られます。
仮にこの物件の価格が5000万円で満室時の家賃収入が確実に得られるなら利回りは17.9%です。
しかし先ほどもお伝えしたとおり、家賃は下がっていくものですし空室も発生します。
よって、最低でも利回りは「現況」の家賃以下になる可能性は想定しなければいけません。
上図では、現況の家賃収入が60万円となっていますので、年間で720万円の家賃収入。
同じく物件価格が5000万円なら利回り14.4%と、先ほどより3.5%も低くなります。
もし、高い家賃設定のままの長期入居中の部屋が退去となれば、次から家賃が下がる可能性があるため更に利回りは下がります。
満室時の家賃を見て「だろう」で利回りを計算するのではなく、現況と入居状況を見て「かもしれない」の利回りを考えるようにしましょう。
2-3:空室の続いている期間は?
適正な家賃も利回りも把握できた。
問題なければ後は物件の購入を本格的に進めていくだけ!
そんな風にすぐにでも行動に移したいところですが、まだチェックポイントはあります。
下図をご覧ください。
空室になっている部屋がいつから空室になっているのか気になりませんでしょうか。
「購入してから空室を埋めればいいんじゃない?」と思われるかもしれませんが、少し注意が必要です。
もし空室発生から1年も経過していたりすると、その部屋には何らかの問題があるということになります。
空室は平均して2ヶ月前後で埋まるのが通常ですので、空室期間が半年以上経過したものは要注意です。
さすがに事故物件だった場合は、物件の詳細図面などに表記することが義務付けられていますが、汚れ、破損などは記載する義務はない上に、ゴミ屋敷となったまま借り主が夜逃げしてしまったという厄介なケースもあり得ます。
レントロールは主に現況をベースとして作成されるため、空室発生日が記載されていることは多くありません。
空室の部屋については、必ず「いつから空室なのか」「長く空室なのは何故なのか」を必ず確認するようにしましょう。
2-4:「契約日=入居日」ではないかも?
最初にご紹介したレントロールの例は、「契約年月日=入居日」という前提で作成させていただいたものです。
しかし、レントロールによっては「契約年月日=更新日」となっているケースがあります。
入居者のいる部屋だからという安心感から見落としがちなのですが、入居日というのは「長期入居か短期入居か」という大事な情報となります。
例えば以下のように、実際の入居日まで記載されたレントロールがあったとしましょう。
部屋ごとに入居日は違いますが、真ん中3部屋は入居してから数年経過していることが分かります。
ここで注意しなければならないのは、契約年月日の2017年というのが更新であるのは分かるものの、2019年の契約満了日に再び更新してもらえそうかという点。
更新するかどうかは個人の事情で全く違いますから予想することはできません。
ただ少なくとも、上図で言うなら103号室は既に7年も住んでいるのに最初の高い家賃設定のまま。
105号室も入居して5年経っていますし、角部屋と同じ家賃だと知ったら「不公平だ」と思うことでしょう。
そこで予想されるのが「家賃交渉」です。
家賃の値下げは更新の直前に入居者から交渉されることが多く、双方の納得できる話ができない場合は退去に繋がることも多くあります。
つまり、上図の例であれば真ん中の3部屋は次の年に家賃交渉が入る、若しくは退去の可能性があるという風に予想できるのです。
もし、不動産会社などから受け取ったレントロールで契約年月日が全て最近の日付であれば、各部屋の入居日まで確認することで事前の退去予防もできますし、正確な収支シミュレーションも可能になります。
2-5:長期入居は修繕費が高くなる可能性
上記までに長期入居の部屋があった場合に注意すべきポイントがいくつかありましたが、「修繕費が高くなる可能性」も考えなければいけません。
家というのは時と共に劣化していきます。
特に人が住むことによって徐々に摩耗していくフローリングや、窓際の日焼け、気づいたらカビだらけになっていた水回りなど、長く住めば住むほど修繕費が高くなる箇所が発生するのです。
几帳面な性格で掃除を小まめにしたり、何かあれば都度連絡をくれる入居者もいます。
しかし、居住期間が長くなるほど修繕やクリーニングの費用が高くなる可能性がありますので、長期入居の部屋が多い場合は、退去時の修繕費などを予め考慮したほうが良いでしょう。
2-6:入居者はどんな人?
レントロールの中で意外と見過ごせないのが「借り主の属性」です。
属性と言っても「個人か法人か」が分かればよいのですが、稀にアパート一棟を丸ごと法人が借り上げていることがあります。
「法人が借り主なら滞納されなくて安心」と思われるかもしれません。
確かにそのメリットはありますが、大事なのは「法人が賃貸契約を解除すると一気に空室が増える」ということです。
基本的に賃貸契約の解約には一定の事前通知期間というものがありますが、1棟丸ごと空室になる上、それが引越しシーズンとは真逆の閑散期だとすると入居付けが非常に困難になります。
借り主の属性がレントロールに書かれていないこともありますが、できるなら「どんな人が借りている?」ということくらいは簡単にでも確認しておいたほうがトラブル回避につながります。
2-7:レントロールに記載されていない収入や支出を確認
レントロールのチェックポイントの最後が「記載されていない収入と支出」です。
特に重要なのが支出。
たまに「水道費込み!」「インターネット代込み!」なんて物件があるのを見たことがある方も多いかと思いますが、実はこういった、オーナー負担の支出がレントロールに記載されていないことがあります。
更に「フリーレントで契約のため家賃が入らない」「更新料○○%割引で契約した」なんてこともあります。
また、駐車場代や敷地内の倉庫使用料などが記載されていても、「自動販売機の売上」や「看板の設置料」などが記載されていないこともあります。
想定外の収入になるため問題ないと思われるかもしれませんが、収入というのは後の税金に関わる話です。
決して軽視すべきものではありません。
もし上記のようなものが記載されていなかったとしたら、最初の収支シミュレーションに影響します。
不動産の契約では必ず「重要事項説明」で全てのことを知ることができます。
しかし契約直前で確認するより、レントロールを受け取ってすぐに「他に記載されていない重要事項はないか」と確認したほうがトラブルの回避に繋がります。
3.レントロールの悪用にも注意!
さて、レントロールが不動産投資で以下に重要なものかお分かりいただけたかと思います。
ただ、最初にお伝えしたとおりレントロールは公的資料でも決まった書式があるわけではないため、中には内容を改ざんした悪質なものもあります。
そこで最後に、怪しいレントロールの例を挙げ、どこに注意すべきか見てみましょう。
3-1:家賃相場と比べて明らかに高い・・
レントロールを見ただけでは分かりませんが、LIFULL HOME’Sの「見える!賃貸経営」で公開されている家賃相場と比較してみましょう。
例としてあげた「メゾン葛飾東」という築20年のアパート家賃は、明らかに相場と比べて明らかに高いですよね。
このように本当の賃貸契約とは違う家賃が書かれている場合もありますので、家賃相場は自ら確認することを忘れないようにしましょう。
3-2:契約年月日や入居日が不自然・・
あまりにも分かりやすぎますので、あまりこういった書き方をしているものはありませんが、実は見逃しポイントでもあります。
契約年月日や入居日が一定の期間にまとまっていたりした場合、何か特別な条件を付けて無理やり入居者に入ってもらっている場合や、悪質なケースでは入居者がサクラなんていうこともあります。
賃料と併せて契約年月日などが不自然に感じたら注意しましょう。
3-3:そもそも満室ではない・・
これはかなり悪質。
レントロールは誰でも作れてしまいますので、空室なのに「入居中」と書いている場合があります。
これもレントロールを見ただけでは確認できませんので、実際に現地に出向いて確認する必要があります。
3-4:実は退去予定がある・・
親切なレントロールであれば、備考欄を作って退去予定日を記載してくれています。
しかし、利回りが高ければ物件も高く売ることができるため、退去予定日を知っていながら記載していないケースがあるのです。
当然、不動産業界に限らず嘘はご法度。
退去予定があるのに「予定はない」なんて嘘が発覚すれば契約無効の要因ともなりますから、退去予定があるかどうかは不動産会社に必ず確認しましょう。
まとめ
今回は不動産投資のレントロールについて解説させていただきました。
ただ、ごく稀に大家さんも管理会社もレントロールを作成していないことがあります。
レントロールを作るまでもないほど上手く運営できているのか分かりませんが、入居者が決まったら後のことは放置というケースがあるのです。
これは本当に稀なことなので、逆にそうそう出くわすものでもありませんが、レントロールを見たいとお願いした時に慌てる素振りがあったり「これから作成します」なんて返答があったら、よほど魅力的な物件でないかぎり購入は見送ったほうが良いかもしれません。
物件の管理状況に対する懸念やリスクが高いためです。
レントロールは現状を知るだけでなく、周辺地域の賃貸需要も見えてくる重要な書類。
ご紹介したポイントを抑えて、物件選びの際は必ず見るようにしましょう。
尚、レントロール以外でも気をつけておきたい不動産投資の失敗事例もご紹介していますので、是非ご参考になさってください。
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