久しぶりのリノベーション記事になります。
今回は、「東京都港区麻布十番」にある築43年中古マンションのリノベーション再生事業をレポートしていきます。
(TOP画像:都市計画(素案)の概要より引用)
目次
1.地域情報
・麻布十番 名前の由来
「麻布」という名前は、読んで字の如くもともとは麻の布を産したことが由来であり、その地名は元禄年間にはすでに確認されているのでかなり古い名前です。
「十番」という名前は、江戸時代に古川の改修工事を行う際に、10番目の工夫を出したためや、10番目の土置きだった、10番目の工区だった等いくつかの説があります。
1962年(昭和37年)に麻布網代町、麻布坂下町の各全域と、麻布宮下町、麻布新網町、麻布南日ヶ窪町、麻布宮村町、麻布一本松町、麻布山元町、麻布新広尾町の一部の地名を改め「麻布十番」が誕生しました。
・地域の歴史
麻布エリアには江戸時代の大名屋敷が多く、これらの広大な土地が大使館に適しており各国の大使館が点在しています。そんな多くの大使館の中心にあるのが麻布十番です。
そのため現在でも外国人が多く住み、港区内の外国人人口はコロナ禍明け最高人数となっています。麻布十番は国際色豊かな飲食店が多く、国際交流の場としても楽しめるエリアです。
1956年(昭和31年)に日比谷線の建設計画が発表されましたが、「銀座に客を取られる」との商店街の思いから反対運動があり撤廃されました。その結果、日比谷線は麻布十番ではなく迂回し六本木に開通され、最寄り駅になった六本木駅からも高低差があるため「陸の孤島」と呼ばれていました。
鉄道がなく不便な地域でありましたが、都道319号や麻布通りなどの大通りに面しているのでバスの利用がメインでした。
現在でも、都営バスのほか港区コミュニティバス「ちぃばす」が、地域住民のニーズを満たしています。
2000年(平成12年)麻布十番駅に東京メトロ南北線・都営地下鉄大江戸線の開通に伴い、主要エリアの何処へ行くにも15~30分程度で移動できるアクセス抜群の街へ変わりました。
■都営地下鉄大江戸線で新宿駅まで12分
■都営地下鉄大江戸線で渋谷駅まで16分(乗り換え1回)
■都営地下鉄大江戸線で東京駅まで23分(乗り換え1回)
■東京メトロ南北線で目黒駅まで7分
・麻布十番商店街の歴史
商店街の西のはずれには、1949年(昭和24年)開湯の「麻布十番温泉」がありました。当時、都内では数少ない温泉のひとつであったため多くの人が訪れる有名な温泉施設でしたが、2008年(平成20年)建物の老朽化等の理由で惜しまれながら閉店しました。
また、毎年8月下旬の土日2日間、昨年は4年ぶりに開催された麻布十番商店街の「麻布十番納涼まつり」は50年以上の歴史があります。寄席や催し物などが開催され、老舗店の納涼まつり限定品や全国各地のグルメ店も出店されて多くの人で賑わいをみせます。
・現在の麻布十番
麻布十番と呼ばれる地域は、大きなビルや商業施設がなく個人商店や住宅地が混在する地域になっています。
2003年(平成15年)には複合施設「六本木ヒルズ」が開業、2023年(令和5年)には麻布台ヒルズが開業し、複合施設~麻布十番まで足をのばして下町風情を観光する人も増えています。
「陸の孤島」といわれた地域であったからこそ、古くからの老舗や路地裏の街並みが今でも残っていて、この地域から見える大きなビルが幻想的です。
麻布十番商店街には、新店舗から老舗の名店まで数多くの飲食店があり、何度も足を運びたい街並みです。
2021年~2023年のマンション売買成約事例によると、港区全体では3678件の取引数ですが、麻布十番エリアでは73件と非常に少ない取引数となっています。
さらに単身者向け30㎡以下のマンションは27件となり、利便性も高く観光地として名が知られている東京のランドマークともいえるエリアですが、この取引数から市場に出回る物件数が少なく希少価値の高い物件になります。(出典:REINS Market Information)
また、2023年の都心5区(港区、千代田区、中央区、新宿区、渋谷区)のマンション賃料は最高値となっており、港区の中古コンパクトマンションの売買・賃貸価格は前年期より上昇が続いています。
対象の物件はそんな好エリアにあり、駅から近い事や、周辺の買い物・飲食店の充実さは常に高い評価のあるマンションです。
・これからの麻布十番
まだまだ麻布十番周辺のわくわくは止まりません!
六本木5丁目西地区には、「第2六本木ヒルズ」と話題になっている大型再開発<六本木五丁目西地区市街地開発事業>が2025年度に着工し、2030年度の竣工を目指しています。
六本木ヒルズよりも大きな敷地面積と高い展望台、事務所・ホテル・店舗・共同住宅・劇場・学校等5つのエリアが予定されていて、これまでで最も大きな開発ではないでしょうか。
また、麻布十番商店街から古川を挟んだ地区では、<三田小山町西地区第一種市街地再開発事業>が2024年度に着工し、2028年度の竣工を目指しています。
3つのエリアに共同住宅・事務所・店舗・保育園等が予定されており、麻布十番エリアとの回遊性と利便性を考えた道路整備、地域の人の憩いの場として交流できる広場等が整備されます。
2つの再開発は、どちらも麻布十番駅利用エリアのため、これからますます麻布十番が活気づいて行くのが想像できます!
2.物件情報
・立地
麻布十番駅から徒歩1分、新一の橋交差点に隣接していて、1階には有名老舗店「麻布永坂 更科本店」があるマンションの一室です。
80年代のマンションに多く見られる、茶系を基調とした外観とエントランスです。エントランスはリフォームされて明るくなり、防犯カメラやセキュリティ対策も時代に合わせてリノベーションされていて、築年数の古いマンションですが管理がしっかりされています。
麻布十番駅が目の前という好立地以外にも「六本木ヒルズ」へ徒歩約12分、「東京タワー」へ徒歩約15分、2023年11月に開業し話題の「麻布台ヒルズ」へも徒歩約12分で歩いて行けるエリアです。
マンション近くにある電動キックボードを利用すれば、虎ノ門ヒルズや青山・表参道方面まで気軽に足をのばせます。
・眺望
2つあるバルコニーからは「東京タワー」「六本木ヒルズ」「麻布台ヒルズ」が見えます!
建物が密集した地域ですが最上階の角部屋ということもあり、東京のシンボルが一望できる貴重な物件です。実際に見てみると、距離の近さからなかなかの景観で圧倒されます。
・物件概要
所在地:東京都港区麻布十番
面 積:27.75㎡
間取り:1R
築年月:1980年5月
・室内写真<Before>
3.プランニング(3月30日更新)
・コンセプト
~東京を実感する、最高の眺望と開放感を独り占めできる空間に住む~
港区の住環境が整っている場所に、職住近接を考えている30代の単身女性に好まれるデザインを企画しました。家賃と同額程度の支払いで資産を手にしたい!という方も、将来は投資物件として考えることもできる物件です。
これほどの立地にありながら、築年数の古さから魅力を最大限に活かすことができていなかった物件を、当社の企画力で生まれ変わらせます。
・リノベーション担当者の声と施工工事
この物件の推しポイントは、2面のバルコニーから入る明るい光と眺望です。右のバルコニーからは東京タワー、左のバルコニーからは六本木ヒルズが一望できてこの部屋で東京を感じる事ができます。
1Rだった間取りは1DKに変えることで、生活の動と静を分ける空間を作り快適性を確保します。動と静の仕切りには、扉が左右どちらでも行き来できる3枚の引き違い戸を利用するので、引き戸を右に寄せるか、左に寄せるか、気分によって眺望の見え方や部屋のカタチをカスタマイズできます。
また、最上階角部屋の一番のポイントである明るさを最大限に活かすために、窓側の柱から突き出した袖壁部分と脱衣所の仕切り上部にはアクリル板を利用し、自然光が入るデザインにしています。
この推しポイントを最大限に活かしながら、限られた広さの中での設備配置が難題でした。
まず、給湯器の設置場所の変更です。室内に設置されていることでスペースの活用が妨げられ、尚且つ一酸化炭素中毒の心配があったため、屋外に設置場所を変更する必要がありました。
また、3点ユニットの下には配管が通っていて高さがありましたが、生活の利便性を考え段差を減らすことが課題でした。
そして部屋全体、4面全てに梁があり高さの制限がかかる箇所があるため、設備の配置には苦戦しました。
給湯器は、当マンションの管理組合の許可を受け壁に穴をあけてベランダに移動させます。それにより、室内の空間を確保でき一酸化炭素中毒に伴う事故のリスクも解消することができます。
3点ユニットを含む室内の段差は、一度すべての床を剥がし専有部分の配管を新設し床を張り直すことで、高さと広さを確保する工夫をしています。
さらに、室内を開放的に見せるポイントとして、キッチンの壁を取り除き明るい光が入ってくる配置にしました。
限られた広さの中で、どれだけ機能性をもった環境をつくれるかを考え、この物件を選ぶ人には、部屋で過ごす時間も妥協してほしくないと思っています。
・間取り<Before><After(予定)>
4.施工完了(4月15日更新)
2度にわたり投稿してきました≪ラフィネ麻布十番≫のリノベーション工事が完了し、引き渡しを受けました。スケルトン解体からのリノベーションだったため時間はかかりましたが見違える空間に生まれ変わりました。
・Before/After
・室内写真<After>
室内に入っての第一印象は、バルコニーからの光が白を基調とする室内をより広く、明るく見せています。また、ウッド調のフローリングや建具が使用されていることで、室内全体がやわらかい雰囲気になっています。
室内の段差を減らすために床は遮音性能のある二重床に替え、床下の空間に配管を新設しています。これにより、室内全体の天井高も圧迫感を抑えることができました。
また、給湯器はベランダへ設置して、元あった穴を塞いだことで、室内空間を有効に使うことができました。
そして、意外と盲点なコンセントの位置問題です。この室内は四隅すべてにコンセントを設けてあるので、電化製品の配置に悩むことはありません。様々なレイアウトができることでイメージも大きく膨らみます。
ポイントとしてあげていた「袖壁部分と脱衣所の仕切り上部のアクリル板」は、室内のアクセントになり光を取り入れ、部屋全体の圧迫感を軽減させる効果があります。
このアクリル板があることで、室内が洗練された雰囲気になります。
そして2つ目のポイントは扉の使い分けです。
1DKを仕切る引き違い戸をはじめ脱衣所は引き戸にし、場所によって使い分け限られた空間の中で使い勝手とバランスを考えています。
キッチンと洗濯機置き場はコンパクトにまとめていて、家事動線を考えた無駄のない作りになっています。キッチン収納も洗濯機置き場上の収納も一人暮らしには十分な収納です。
エントランスはDKとの扉で仕切られていますが、白でまとめてられていて明るい印象になっています。シューズクローゼットも大きく収納力があるので、エントランススペースに鏡やハンガーを置くこともできます。
必要最低限の設備と工夫で室内空間を広く見せ、光を多く取り入れることが活かされた仕上がりになりました。
完成した部屋からの東京タワーは、また格別な景色に見えました。
・担当者インタビュー
完成された室内を見てこだわり抜いた設備がはまり、想像以上の仕上がりになりました。限られた空間の中で、キッチンスペースや洗面スペースなどの設備周辺はストレスのない空間が確保されています。
また、プランニングや間取り図だけでは気づかなかった、1DKで仕切られた設備の配置が功を奏して、事務所やサロンとしても利用できる万能物件であると可能性が広がりました。
27.75㎡の広さは、一般的にシンプルな1Rや1Kとなることが多いですが、細部のスペースまで最大限活用した間取り・設備を取り入れたことで同じ広さの他物件よりも格段に暮らしやすい部屋作りができたと感じています。
元々明るかった室内ですが、カーペットからフローリングに替え、建具との配色も調整したことで、明るさのバランスが取れてやさしい空間です。
周辺の新築物件と比べても劣らない設備で、長く住める価値ある物件に変わりました。
リノベーションの企画+立地の良さから、すでに多くの反響をいただいております。
これからも資産価値を高めるプランニングに工夫を織り交ぜて、多くの可能性がある物件を造っていきます。
(担当者:リノベーション事業部 小浜)
・フォトギャラリー
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
本物件は、不動産クラウドファンディング「投活」にてリノベーションプロジェクトとして組成し、多くの投資家様からご出資いただき現在運用をしています。
不動産クラウドファンディング「投活」では、物件再生事業に1万円から出資することができます。
また当社では、不動産投資のコンサルティング事業だけでなく、これまでの中古コンパクトマンションの仕入れ・販売の経験を活かし、リノベーション事業部での物件再生事業にも注力しています。
是非、物件が生まれ変わる様子を見て、不動産にご興味を持っていただけると幸いです。
今後も当社のリノベーションシリーズにご期待下さい。