早期償還とは?理由やデメリットを解説【不動産クラウドファンディング】ヤマワケで起きた償還遅延も

不動産クラウドファンディングでは「早期償還」が発生することがあります。

その言葉の意味は理解していても、なぜ早期償還になったの?と疑問に思う方がいるかもしれません。
また、投資家にとっては早期の利益確定や再投資の機会が得られる一方で、予定されていた利益額が減少する可能性もあり、メリットとデメリットがあります。

この記事では「早期償還」について詳しく解説します。
さらに、以前にヤマワケエステートで話題になった「償還遅延(延期)」についても補足でお伝えします。

この記事が向いている人
✓ 不動産クラウドファンディングの早期償還をしっかりと理解したい人
✓ 不動産クラウドファンディングで早期償還がよくわからず心配な人
✓ 早期償還を受け取ったものの得(損)をしたのか気になる人

 

1.不動産クラウドファンディングでの早期償還とは

早期償還とは、文字通り、投資案件において予定されていた期間よりも「早期に」運用終了となり「償還」が行われることを言います。

不動産クラウドファンディングの想定の運用期間の例

不動産クラウドファンディングでは募集の段階で「想定の運用期間」が設定されており、その間は出資したお金を預けておき、想定通りに運用が行われると、その運用期間後にお金が償還されるという仕組みです。

このとき例えば、この想定の運用期間がもともと12カ月だった案件で、実際には半分の6カ月で運用が行われ償還されるケースのことを「早期償還」と言います。

2.早期償還が起こる理由

こうした早期の償還はなぜ起こるのでしょうか?

不動産クラウドファンディングの早期償還が起こる理由:想定よりも早く物件が売却できたから

理由1.想定よりも早く物件が売却できたから

想定運用終了日の前に売却が決定した場合、想定よりも早く償還される場合があります。

例えば、ある物件をリノベーションし、1年後に売却できると予測して運用期間を1年に設定したファンドがあるとします。このファンドで、物件の買い手が思いのほか早く見つけることができ、運用開始から半年で売却できた場合、1年を待たずして半年で運用を終了させて、償還することがあります。
そのように、早く物件が売れたということで早期償還という結果になるのは、しばしば不動産クラウドファンディングでは起こっています。

理由2.新たな資金調達をしたから

不動産クラウドファンディングを通じて出資金を集めた後に、途中で新たな資金調達(再ファイナンス)を行うことがあります。より低い利回りで資金を調達できた場合、借り換えが発生し、不動産クラウドファンディングで集めた出資金は早期に返済されるということが起きます。

早期償還には以上のような理由がありますが、不動産クラウドファンディングにおいては多くの場合、前者の「想定よりも早く物件が売却できた」という理由です。
そのため、不動産クラウドファンディングでは、インカムゲイン型のファンドとキャピタルゲイン型のファンドがありますが、売却が関わるキャピタルゲイン型のファンドに出資した際に早期償還が発生します。

キャピタルゲイン型ファンドで早期償還が発生

なお、早期売却のケースが多く見られる会社は「物件を売却できる営業力」「需要が高い不動産を見極める目利き力」「リノベーション等で物件価値を高める企画力」などの特徴があります。
こうした点から考えると、早期償還が多い不動産クラウドファンディング会社は、不動産会社としての総合的な実力を備えており、今後も信頼できる存在と言えるでしょう。

逆に言うと、後述しますが「償還遅延(延期)」が起こっている会社は、その観点では不動産会社としての力が十分ではない可能性もあり、早期償還になっているか償還遅延になっているかは、投資先を選ぶ上での1つのポイントとして確認したいところです。

3.早期償還のメリット・デメリット

早期償還について理解が深まったと思いますが、「結局早期償還ってどんなメリットやデメリットがあるの?」と気になる方が多いと思います。
メリット・デメリットそれぞれを詳しく見ていきましょう。

早期償還のメリット

まず大前提として、早期償還になったということで「元本割れせずに出資金が手元に戻ってくる」という事実は最大の恩恵ではありますが、その上で、早期償還のメリットは以下の2つがあります。

不動産クラウドファンディングの早期償還のメリット

メリット1.早期に利益を確定できる

想定していたよりも早く元本と利息を回収でき、利益を確定できます。

運用期間が長ければ長いほど、企業の経営状況や経済状況の変化が起こる可能性が高まり、不動産価値が低下するリスクも高まります。
しかしながら、早期の利益確定ができれば、そういったリスクを早期に軽減できます。

また、「早めに利益を確定できて安心した」といった声も、SNSを中心に多くの投資家から聞かれます。
このように、早期の利益確定はリスク回避の面だけでなく、精神的な安心感を得られるという点でも、メリットと言えるでしょう。

メリット2.次の投資に資金を回せる

早期償還のもう一つのメリットは、他の投資案件に出資ができる点です。

不動産クラウドファンディングの場合、運用期間中は基本解約ができません。長期運用ファンドは特に、長期にわたり拘束されることになります。しかし、早期償還された場合、投資家は元本と利息を早期に回収でき、その資金を他の投資案件に再投資することができます。

好条件のファンドが公開されたとしても、出資金がなくては投資は行えず、投資機会の損失に繋がります。
一方で、手元に出資金が戻ってくれば、新たなファンドへの出資が行えるようになり、投資機会も増えていきます。

早期償還のデメリット

一方で、早期償還のデメリットは以下の2つです。

不動産クラウドファンディングの早期償還のデメリット

デメリット1.当初想定していた利益が得られない

予定していた運用期間よりも前に返済されるため、元々の投資期間をフルに使っていれば得られたはずの利息や収益よりも、少なくなってしまう可能性があります。

例えば、出資額 100万円、利回り10%の投資物件が、運用期間365日間のとき利益額は100,000円ですが、これが183日間(約半年)で早期償還されると、利益額が50,137円になります。

想定通りの償還 早期償還
出資額 100万円 100万円
利回り 10% 10%
運用期間 365日 183日
利益額 100,000円 50,137円
デメリット2.投資計画を変更する必要がある

想定よりも早く投資資金が返ってくることで、当初立てていた投資計画を見直す必要が生じることがあります。

資金が早期に戻ってきても、そのまま再投資を行わないのであれば、特に問題はありません。
しかし、予定通りのパフォーマンスを維持したい場合には、新たな投資先を探し、申し込みを行うなどの対応が必要になります。

このような対応を「早期償還がなければ発生しなかった手間」と感じる投資家もいるかもしれません。

早期償還でも想定した利益が得られるパターン

デメリット1の「当初想定していた利益額が得られない」というのは、資金が予定よりも早く返ってきているだけで、利回りが一緒のままであれば損はしていません。しかし、もともと期待していた利益額は得られないので、損したような気分になる投資家もいるでしょう。

そういった投資家に朗報です!
一部の不動産クラウドファンディング会社は、想定利回りから上振れさせた利回りで償還を行う可能性のあります。

早期償還をしつつ、上振れした利回りになる例は、先ほどのデメリットの表に加えるとわかりやすくなります。

想定通りの償還 早期償還 早期償還&利回り上振れ
出資額 100万円 100万円 100万円
利回り 10% 10% 20%
運用期間 365日 183日 183日
利益額 100,000円 50,137円 100,274円

この場合は、想定より早くお金が戻ってくると共に、想定していた利益額も得られるので、「利益額」を重視する投資家にとっても満足できる結果になっているのではないでしょうか?

早期償還時に利回りを上振れさせるかどうかは、各会社の配当ポリシー次第です。現時点では、上振れさせるような配当ポリシーを選択している会社は少ないのですが、ひとつ会社を上げると「投活(トウカツ)」があります。

投活において早期償還と利回りが上振れになったファンドをいくつかご紹介します。

投活の早期償還と利回り上振れファンドの例

早期償還となっても利回りは上昇しており、投資家からも前向きな意見が見られました。

 

気になる方は投活のサイトをチェックし、投資に興味があれば会員登録することをオススメします。

 

4.逆に償還が遅れることもある!?ヤマワケ等で起きた「償還遅延」とは

早期償還とは反対に、「想定通りに売却ができない」「売却の目途が立たない」といった理由から、運用期間が延長され、償還が遅れるケースもあります。これを「償還遅延」と呼び、本記事でも簡単に触れておきます。

※会社や発信者によっては、償還遅延ではなく「延期」「延長」といった言い方もあります

不動産クラウドファンディングにおける償還遅延と言えば、2025年3月に話題となった「ヤマワケエステート」の事例についてSNSなどで知った方もいるのではないでしょうか。

ヤマワケ等で起きた「償還遅延」

不動産業界の事情に詳しい方であれば、不動産の売却が予定より遅れることは「珍しくないこと」として受け止めるかもしれません。そのため、償還遅延もリスクの一つとしてあらかじめ想定している方もいるでしょう。
とはいえ、クラウドファンディングにおける償還遅延は、これまで業界全体でも数えるほどしか例がなく、多くの投資家にとっては不安材料となりがちです。

償還遅延後に考えられる結果としては
・期限より遅れても最終的には償還されるか
・売却ができない状態が続き、不良債権化したり元本割れが発生したりするか
のどちらかです。
ただし、後者のようなケースは、2025年時点では不動産クラウドファンディング業界において確認されておらず、非常にまれなケースと言えます。そのため、基本的には「最終的には償還される可能性が高い」と考えられるでしょう。

とはいえ、償還遅延が発生すると、「別の投資に資金を回せなくなる」といった機会損失や、「この案件は失敗だったのでは…?」といった心理的な不安も生じやすくなります。

そのため、やはり投資家としては償還遅延は避けたいところです。
少しでもそのリスクを減らすためには、投資をする前に「事業者の実績を確認」「複数案件への分散投資」「余裕資金での運用」など、投資の基本をしっかり押さえておくことが大切です。

5.まとめ

今回の記事では、不動産クラウドファンディングの早期償還について解説しました。

キャピタルゲイン型の不動産クラウドファンディングに投資する際は、早期償還が起こりうることを理解し、そのメリットとデメリットを踏まえて最善の動きができるようにしていきましょう。

 ▼不動産投資コンサルティング       ▼不動産クラウドファンディング
▼不動産投資コンサル    ▼不動産クラファン