「不動産クラウドファンディングの市場規模は?」「将来性がある投資なの?」
不動産クラウドファンディングは近年注目を集めていますが、今後も人気が続くのか気になる方も多いでしょう。
今回は、不動産クラウドファンディング市場の動向や規模、具体的に投資家にどんな影響があるかも含めて、詳しく解説します。
この記事が向いている人
✓ 不動産クラウドファンディングの市場動向をチェックしたい人
✓ 不動産クラウドファンディングの将来性を確認したい人
✓ 不動産クラウドファンディングの将来が不安な人
目次
1.不動産クラウドファンディングの市場規模の現状と推移
不動産特定共同事業のクラウドファンディングの案件数と出資募集額は、2024年7月に発表された国土交通省「不動産特定共同事業の利活用促進ハンドブック」によると、拡大傾向にあります。
2018年〜2023年の過去6年間の出資募集額については、2018年に12億7千万円でしたが、2023年には1,007億8千万円で約79倍に成長しました。
まさしく右肩上がりで市場規模が拡大しています。
また、案件数については、2018年〜2023年の過去6年間で以下の通りで、出資募集額に伴って件数を伸ばしています。
この数字からも不動産クラウドファンディングの市場規模は近年、急速に成長していることがわかります。不動産クラウドファンディングに参入する事業者とサービスを利用する投資家とともに増え続けていることがわかります。
※参照:国土交通省 不動産・建設経済局 不動産市場整備課「不動産特定共同事業の利活用促進ハンドブック」
参考までに『不動産クラウドファンディング』というキーワードのGoogle検索数を確認すると、案件数と出資募集額に応じて徐々に増えていることもわかります。
2.不動産クラウドファンディングが拡大した理由
不動産クラウドファンディングの市場規模が日本で拡大してきた理由は、大きく3つあります。ひとつひとつ見ていきましょう。
(1)法改正による参入ハードルの緩和
不動産クラウドファンディングが近年拡大した理由の1つは、2017年12月に行われた不動産特定共同事業法の改正です。
従来は、資本金1億円以上が必要という条件があるなど不動産特定共同事業の許可を得るためのハードルは高く、各社は不動産ファンドビジネスを開始するのが難しい状況でした。そこで、2017年に同法が改正されることになります。
国土交通省が公表した『小規模不動産特定共同事業 パンフレット』
この改正では、小規模不動産特定共同事業の特例が導入され、最低1,000万円の資本金があれば登録制で事業を開始できるようになる(投資額などの制限有り)など、一定の要件を満たすことで、小規模事業の範囲内であれば、登録制で事業を開始できるようになりました。この改正により、事業者の参入要件が大幅に緩和され、不動産クラウドファンディングに参入する企業が一気に増えました。
不動産業界の大手企業だけでなく、リノベーションや地方特化など独自の路線の中小企業の参入もあり、投資家にとっては様々な魅力的なサービスが展開され、現在の不動産クラウドファンディング市場の拡大に繋がっています。
(2)デジタル化で進む投資の利便性向上
近年のデジタル技術の進歩により、不動産クラウドファンディングはオンラインで手軽に完結できる投資手段として急速に普及しています。
■ 投資家にとっての利便性向上
・スマートフォンやPCから口座開設、本人確認、出資、運用状況の確認までがすべてオンラインで完結
・クラウド上での契約書管理や自動通知システムにより、手続きの手間や不安を軽減
■ 事業者にとっての参入障壁の低下
・不動産クラウドファンディング向けの運営管理システム(SaaS型)を提供する企業が増加し、システムをゼロから自社開発する必要がなくなった
・これにより、初期費用や開発期間を大幅に抑えながら、短期間でサービスを立ち上げることが可能に
こうしたテクノロジーの基盤の進化が、事業者側・投資家側の両方にメリットをもたらし、不動産クラウドファンディング市場の成長を支えています。
(3) 価値観の変化と不動産投資の拡大
近年、不動産投資のニーズが高まっていて、それに伴い“ハードルが低い不動産投資”として不動産クラウドファンディングもニーズが高まり、拡大していると言えます。
日本で不動産投資の需要が増えている背景には、以下のような要因が挙げられます
・長期の低金利環境により、預金や国債では資産が増えにくく、利回りの高い投資先として不動産が再評価されている
・インフレや物価上昇に備えて、現金や預金のままでは資産価値が目減りするという懸念から、実物資産(不動産)へのシフトが進んでいる
・政府による「貯蓄から投資へ」の方針があったり、SNSやYouTubeを通じて、投資系インフルエンサーが投資を推奨する機会が増加し、「投資が当たり前」という価値観が浸透しつつあり、その選択肢の一つとして不動産投資がある
こうした社会的・経済的な背景のもと、不動産投資はある程度手堅くリターンが見込める投資手法として、認知されていきます。
しかしながら、不動産投資は多額の初期資金や知識が必要なので、不動産に興味があっても始められない人が増えました。そこで、不動産投資クラウドファンディングであれば、1万円〜数万円といった少額から手軽に始められるため、人気が集まっているのです。
3.市場規模拡大によって投資家が得るメリット2選
不動産クラウドファンディング市場は日本を含めて世界中で拡大傾向にあります。では拡大するとどのようなメリットがあるのでしょうか。
この章では不動産クラウドファンディング市場が拡大する3つのメリットを解説していきます。
(1)サービスの品質の向上や選択肢の拡大
不動産クラウドファンディングの競争が激化する中、競争原理が働き、各サービスは顧客満足度を高めるために積極的にサービス品質を向上させていくことが期待できます。
Webサイトの改善やカスタマーサポートの強化、投資プロジェクトの厳選など、投資家にとってより魅力的な環境が整っていきます。
この結果、投資家は安心して資金を投じることができます。
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また、競争の中で自ずと差別化をする事業者が現れていくことで、多種多様な不動産クラウドファンディングサービス、ファンドができるようになっていきます。
すると、投資家は投資スタイルや目的に合わせて比較検討できるため、選択の幅が広がるでしょう。
(2)認知度が上がり周囲から理解を得られやすい
市場規模が拡大することで、多くの人が「不動産クラウドファンディング」を知ることになります。
新しいサービスの宿命ですが、出てきたばかりのサービスに対しては多くの人は懐疑的になるものです。
新しいサービスをいち早く試す人もいますが、一方で周囲の意見や評判を参考にして始める人、伝統的なサービスに固執する人もいます。
そのため、現時点での市場規模の段階では「不動産クラウドファンディングで投資している」と話すと、周囲から理解を得られず、どこか抵抗感や罪悪感を持ってしまうかもしれません。
しかし、今後市場規模が拡大すると、多くの人が利用することになり、周囲も理解を得られて、不動産クラウドファンディングへの投資がしやすくなるということもあるでしょう。
4.不動産クラウドファンディング拡大が社会に与える影響
さて、ここからは少し視点を変えて、不動産クラウドファンディングの発展が社会にどういった影響を与えるかを見てみましょう。
国土交通省「不動産特定共同事業の利活用促進ハンドブック」を参照すると、不動産クラウドファンディングは地域に3つの恩恵があると捉えられています。
資金調達面でのメリット
地方の再開発や空き家の活用など、金融機関からの融資が受けにくい事業や、自己資金や担保価値が不足している案件、すでに融資余力のない事業者にとって、不動産クラウドファンディングは有効な資金調達手段となっています。
この仕組みにより、一般投資家を含む幅広い層から共感や応援を背景とした出資を募ることができるため、従来の融資では難しかった事業の実現が可能になります。
まちづくり参画と関係人口の増加
地域のシンボルとなる施設の開発や、市民の積極的な関与を促したいまちづくりにおいて、不動産クラウドファンディングは効果的な手段です。
住民や地域に関心のある個人が投資家として参画することで、そのプロジェクトへの継続的な関心と関与が生まれ、まちづくりを「自分ごと化」できます。また、投資家が施設の利用者としても関わることにより稼働率が高まり、長期的に安定した運営にもつながります。
行政費用の抑制
財政負担を抑えながら歴史的建築物の保存や公共施設の整備を進めたい自治体にとって、不動産クラウドファンディングは有効な手段です。
不特法に基づくスキームでは、小規模物件でも事業化が可能で、民間資金を円滑に導入できるため、自治体の直接的な費用負担を抑えつつ、公的不動産の活用を進めることができます。
5.今後の拡大見込み
不動産クラウドファンディングの市場規模は、世界的にも日本国内でも今後大きく拡大していくと予測されています。
その根拠として、世界市場の成長を示す代表的なレポートを1つご紹介します。
Polaris Market Researchによる調査では、2024年の市場規模が105億ドル(約1.6兆円)に達し、2025年から2034年にかけて年平均成長率(CAGR)12.8%で成長すると予測されています。
※出典:Polaris Market Research「Real Estate Crowdfunding Market Share, Size, Trends & Industry Analysis Report By Investor (Individual, Institutional); By Model; By Real Estate Sector; By Region; Segment Forecast, 2025 – 2034」
https://www.polarismarketresearch.com/industry-analysis/real-estate-crowdfunding-market
国内外を問わず、不動産クラウドファンディングの普及を後押しする制度整備やプラットフォームの進化が今後も続くと見込まれており、それに伴って市場規模はさらに拡大していくと考えられます。
6.まとめ
不動産クラウドファンディングは、法律の改正、テクノロジーの進化、そして投資ニーズの高まりといった複数の要因により、急速に市場が拡大しています。
今後は世界的にもさらなる成長が予測されており、将来的にも注目すべき投資分野と言えるでしょう。
不動産クラウドファンディングに興味がある方は、将来性のある投資先として、不動産クラウドファンディングを選択肢に加えてみるのも一つの方法です。
この機会に投資を検討してみてはいかがでしょうか?